「おい、おい黄瀬！」
「！え、なんスか！？」
「お前最近どうしたんだよ。４回呼んでも気づかないとか、ついに頭イッたか？」
「なっ、酷いっスよ！」
最近、黄瀬の様子がおかしい。ボーっとしていることがあまりにも多すぎる。
名前に話しかけられればすぐに反応するくせに、他の奴だと何回呼んでも気づかない。
もしかして、恋煩いとか言うんじゃねーだろーな。
「お前最近何考えてんだよ。」
「え？・・・なんのことっスか？」
自覚なしか？それともとぼけてんのか？
「周りの声が聞こえないくらいにずっと考え込んでんだろ。」
「・・・」
「なんかあったのかよ」
「・・・なんもないっスよ」
だったらそんな顔しないだろ。やっぱコイツ馬鹿だ。
俯いて自分に視線を向けない黄瀬に、やはり何かあったのかと確信する。
「言えよ。聞いてやるから」
「だから、なんでもないって言ってるじゃないっスか。もーしつこいっスよ。青峰っち！」
「ふーん。ならいいけど。・・・名前に言うからな」
「なっ！ダメっスよ！！」
名前という言葉がでた瞬間ガバッと顔を上げ青峰を睨む。
何を言うとも言ってないのに、そう言うってことはやっぱりなんか隠してんな。
「やっぱ隠してんじゃねーか。名前には言わないから言ってみろって」
「・・・っ！」
黄瀬はしまったという顔をしてまた俯く。
「・・・最近、怖いんスよ。・・・名前っちがどっか行っちゃうような気がして・・。」
「あ？なんで」
「わかんないっス。でも、怖いんスよ」
本当に怖がっているのか俯く黄瀬の体は小さく震えていた。
「いままで普通だったのにか？」
「・・・いままでも、怖かったんスけど、今はもっと・・何かが迫ってくるみたいに、不安になるんスよ・・」
「・・・好きなんだよ」
「え？」
「お前は名前がそれほど好きなんだよ。だからそうなるんじゃねーのか？ほら、あれだ！本当に大切なものは失ってから気づくって言うだろ？お前は失う前から気づいてんだよ。だから怖いんじゃねーの？」
名前っちが好きだから・・。本当に好きだから、こんな風になるってことっスか・・？
「それならいいんじゃねーの？ま、でもお前は結構重症だから、その気持ち名前に伝えてこい。」
そんで慰めてられてこい。名前ならお前の不安も取り除くことができるだろうしな。
「・・・青峰っち・・。分かったっス！今から名前っちに伝えに行ってくるっス！」
そう言って走っていく黄瀬の背中を見送り、地面に寝っころがり空を見る。
「・・・ったく。世話のやける奴だな」