「あっくん髪弄りたい」
「いーよー」
「やったー!」
むしゃむしゃとお菓子を食べる紫原の後ろに立ち、ゴムと櫛を構える。
あっくんどんな髪型が似合うかなー?
んー、おさげ?お団子?あ、ツインテール?
「あっくんどんな髪型がいい?」
「紫原からの呼ばれ方(ちんを抜かして)ちんが好きな髪型ー」
「えー」
なおさら分かんなくなっちゃった!
「・・・んーと、じゃあ、これは?」
紫原の前髪をまとめて、頭のてっぺんで結ぶ。
紫原の前に立って見てみると、その体に似合わない可愛さについ吹き出してしまった。
「あはっ。あっくん可愛い!」
「んー?紫原からの呼ばれ方(ちんを抜かして)ちんがよく見えるー!」
名前が笑っているのが嬉しいのか、いつもより視界が広がったのが嬉しのか、ニコニコ笑いながら名前に手を伸ばし抱き寄せる。
「あっくん、まだ髪弄りたいよ!」
「んー、でも紫原からの呼ばれ方(ちんを抜かして)ちん可愛いから」
「今のあっくんに言われてもあんまり説得力ないよ!?」
紫原に抱きしめられながら、髪を結んでいるゴムを取って前髪を元に戻す。
「次はどうしようかなー」
膝をついて紫原よりも高い位置に移動する。
前から抱きしめられている為に後ろ髪は少し苦労をしないと届かないが、次はどんな髪型にしようか嬉しそうに考える。
「紫原からの呼ばれ方(ちんを抜かして)ちん膝ついたら顔見えないよー」
少し頬を膨らませながら名前の腰に手を回す。
顔が見えないことは不満だが、腰に手を回したことでさっきよりも密着できたからいいかな、と考えてまたお菓子を食べる。
「じゃあ次は、試合の時のあっくんヘアー!」
そう言って頭の後ろで髪を結う。
よく試合の時に紫原がしている髪型で、なんだかんだいって後ろで髪を結った時はこの髪型が好きだった。
「あっくんかっこいー!」
「んー?」
上から声が聞こえるが名前の表情が見えない為、首を傾げながら名前を見上げた。
普段は自分が見上げられる側だからか、新鮮な感覚に鼓動が早まるのを感じる。
だがそれは名前も同じだった。
「「・・・っ」」
あっくん、かわいい・・!
紫原からの呼ばれ方(ちんを抜かして)ちんどの角度から見てもかわいい・・!
二人同時に抱き着き、かわいいかわいいと連呼する。
第三者から見たらただのバカップルに見えないこともないだろう。
「・・・なにやってるんだ」
「・・・ん?あー!赤司くん!」
紫原を抱きしめながら、前を見ると赤司が呆れた顔をしながら立っていた。
「今ねあっくんと髪弄って遊んでたんだー。赤司くんも、一緒に遊ぶ?」
「・・・いや、」
「あー!赤司くん鋏持ってる!!本格的だね!」
「あぁ、これは」
「俺の鋏なのだよ!」
名前は赤司が自分たちと遊ぶために鋏まで持ってきてくれたのだと思い喜んでいたが、緑間の介入にきょとんとする。
「緑間。ちょっとくらいいいだろう。前髪を切るだけだ」
「だったら早く切ってくれ!」
「あれー?」
二人の言い合いについて行けない名前は首を傾げて二人を見つめる。
相変わらずむしゃむしゃとお菓子を食べる紫原は特に気にせず名前の腰に抱き着いたままだった。
「そう焦るな」
「それは今日のラッキーアイテムなのだよ!それを見に付けていないと駄目なのだよ!!」
「あー、それミドリンのラッキーアイテムだったんだ!なんだ、赤司くんミドリンと遊んでたんだね!」
自分もよく緑間のラッキーアイテムを取って遊んでいたことを思い出し、赤司が自分たちの為に鋏を持ってきたわけではないと気が付く。
だが、名前には二人が楽しそうに言い合っているように見えたために、ニコニコ笑いながら二人を眺める。
「あっ、じゃあ私が赤司くんの前髪切る!」
そう言って紫原の手を解いて立ち上がり二人の間に入る。
名前が立ち上がった事で腰から手を離してしまい、名前がいなくなった事に悲しそうな顔をする紫原。
「だめー。紫原からの呼ばれ方(ちんを抜かして)ちんが髪弄っていいの、俺だけ!」
赤司の方に行った名前を後ろから追いかけ、服を引っ張る。
「なら緑間のを切るといい」
「わーい!」
「なんだと!?」
鋏を渡された名前は緑間に向き合いニコニコしながら接近していく。
だが紫原に服を掴まれている為途中で止まってしまった。
「あっくん、離してよー!」
「危ないからはさみ没収ー」
「あぁ!」
「紫原!その鋏を渡すのだよ!」
紫原は長身を生かして名前の上から鋏を奪うとそのまま赤司に返す。
「はい、赤ちん。」
「なんで赤司に渡すのだよ!!」
「あっくん私ミドリンの髪切りたかったのに・・。」
赤司の元に戻った鋏を見て悲しそうに紫原にそう告げると、紫原は名前を抱えて二人に背を向けた。
「じゃあ、あっちで俺の髪切ってー」
「えー、でもあっくんはそのままの方がいいよ!」
「でも他の人のは切っちゃだめー」
「なんで?」
「だって紫原からの呼ばれ方(ちんを抜かして)ちん俺のだし」
そう言って名前の頭に軽くキスをして微笑んだ。
end