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「名前っちの好きなタイプってどんな人なんスか?」

「え、何急に?」


名前が部室でテーピングの整理をしていると、ジャージに着替えた黄瀬は身を乗り出して名前にキラキラとした顔を向けた。

そして黄瀬の言葉を聞いて一瞬着替える手を止めた紫原は二人に近づく。

「紫原からの呼ばれ方(ちんを抜かして)ちん、俺もそれ気になるー」

「え?むっくんも?・・・んー、でも好きなタイプなんて・・」

特に考えたことないんだけどなぁ・・。
そう思いながらチラッと赤司を見る。
手元に皆のデータを持ちながら名前に背を向けたまま何かを考えている。

話すら聞いてなさそう。
どうせ私の好きなタイプなんて征ちゃんには関係ないだろうし。そもそも興味なさそうだよね。

赤司の様子と自分のネガティブさに悲しくなってきたが、その気持ちを抑え二人に向き直る。

どうせ征ちゃん聞いてないだろうし、好きな人と好きなタイプは違うって言うしね。
ちょっと考えてみようかな。

「うーん、そうだな・・」

「ねー紫原からの呼ばれ方(ちんを抜かして)ちん、背が高くてー、よくお菓子食べる人とかいいんじゃない?」

「・・・」

「えー!なんスかそれ!?そんなのより、カッコよくてキラキラした人の方がいいっスよね!?名前っち!」

「・・・いや、なんかそれタイプっていうか・・」

二人して頬っぺた膨らましてこっちの方がいいだとかなんだとかさ、可愛いけどさ、それもうタイプとかじゃなくてお前らでしょうが。

「違うよー!名前ちゃんのタイプはクールビューティーだよね?ね?」

「桃ちゃん・・。私いつそんなこと言ったっけ・・?」

黄瀬と紫原の言い合いに桃井も加わり、何が何だか分からない状況になってしまった。

あーもう、桃ちゃんまで・・!

「ちょっと!私の好きなタイプは、お菓子よく食べるとかキラキラとかクールだとかそんなんじゃなくて、普通で良いから、私の意思もちゃんと大切にしてくれる人!・・・もうちゃんと言ったんだからみんな静かにしてよ?」

名前が頬を膨らませながらそう言うと、言い争っていた3人は瞬時に止まり名前の元に素早く集まる。

「えー紫原からの呼ばれ方(ちんを抜かして)ちんお菓子好きじゃないのー?」

「俺、名前っちの意思すっごく大切にするっス!めーっちゃ大切にするっスよ!」

「名前ちゃんにはクールビューティーが似合うと思うんだけどなぁー。」

「ちょ、いっぺんに喋んないで・・!」

ちゃんと言ったのに静かにならない!というよりもさっきよりうるさいよ・・!
こういうときに限って征ちゃんは止めに入らないし・・。

「紫原からの呼ばれ方(ちんを抜かして)ちん普通ってどんな感じー?俺普通?普通だよね?じゃあ俺紫原からの呼ばれ方(ちんを抜かして)ちんのタイプ?」

「え、むっくんは・・んー、可愛い系?」

「えー」

「紫原っちは普通じゃないから名前っちのタイプじゃないっスよ!お、俺も普通じゃないけど、でも、名前っちのためなら普通になるっス・・!」

「ごめん、ちょっと意味が分からない」

黄瀬の言葉に呆れながらそう言うと、ちょんちょんと袖を引っ張られそっちを振り向けば桃井が名前の袖を引っ張っていた。

「ねーねー名前ちゃん、普通って、この中のメンバーだったら誰?」

桃井の言葉にキラキラした顔で名前を見る紫原と黄瀬。

「俺?ねー紫原からの呼ばれ方(ちんを抜かして)ちん俺だよねー?」

「これから普通になるっスよ!だから俺っスよね!?」

「・・・桃ちゃん、多分この中に普通はいないよ・・。」

二人の言葉をスルーしながらそう言うと、桃井は不満そうな顔をして頬をふくらませる。

「えーそれじゃあ詰まんない!誰か選んでよー」


桃ちゃん、もうそれ好きなタイプとかじゃなくなってるよ。
そう言っても無駄だろうから言わずに心に仕舞い込んだ。


「この中かぁ・・」

一応、部室を見渡してみる。
・・・うん。やっぱり普通って感じの人はいないよね。

征ちゃんは色々と論外だし、・・・実際は好きなんだけどさ・・。
緑間くんもむっくんも黄瀬くんも、なんか違うし・・。
青峰くん・・?んー、でもそれもなんか違うような・・。

・・・あ。

「黒子くん!うん。黒子くんだね!」

「え、僕ですか?」

「えー!!テツくんはだめー!」

「えー、黒ちん?」

「く、黒子っち・・。」


名前の言葉に桃井は黒子の前に立ち手を横に広げてガードする。


「いや、あの、桃ちゃん、私そういう意味で言ったんじゃ・・」

「名前さん、嬉しいです」

「いや、だから・・!」

「あーテツくん!いつの間に!」


桃井のガードから抜け出して名前の手を握る黒子。
普段通り無表情なのに、今は心なしかキラキラ輝いているように見える。


ッボキ


「・・・せ、征ちゃん・・?ボールペン、折れたよ?」

「名前。そろそろ部活の時間だろ?用意してこい」

「!は、はい!行ってきます!」

赤司の只ならぬ雰囲気に名前は背筋を伸ばして返事をし、一目散に部室から出た。


「・・・お前ら、覚悟はできてるか?」

「「「・・・」」」
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