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「名前、確かうさぎのボールペン持っていなかったか?」

「ん?持ってるよ」

「今日一日借りたいのだが、構わないか?」

「いいよー」

緑間は今日のラッキーアイテムであるうさぎのボールペンを手に入れる為名前を訪ねた。
そして記憶にあった通りうさぎのボールペンを持っていた名前から借りることができ、薄く微笑み安心する。

これで今日も一日人事を尽くすことができるのだよ。

「良かったね。今日のラッキーアイテムなんでしょ?」

「ああ。そうだ」

「それね、小学生の時に征ちゃんにもらったの。多分私がうさぎ好きでうるさかったからだと思うけど。ね、かわいいでしょ?」

「・・・な、んだと・・?」

「ん?・・・え!?なんか顔真っ青だけど大丈夫!?」


さっきまでの余裕はどこへ行ったのか、緑間は顔を真っ青にさせてプルプルと震えている。
それを見た名前は一体どうしたのかと緑間に駆け寄った。


「名前・・。これ以外にうさぎのボールペンはないのか・・?」

「え、ないよ?ねぇ、それより大丈夫?」

「じゃ、じゃあ誰か他の人でもいい。持ってる人は知らないか!?」

「えぇ!?」

がばっと凄い形相で緑間に肩を掴まれる。


ちょ、緑間くんいきなりどうしたの!?


「え、えっと・・。私の友達は持ってなかったような気が・・。」

あまりの形相に震えながらもそう答えると、緑間は名前から借りたうさぎのボールペンを恨めしそうに睨む。

・・・くそっ。まさかこれを赤司が名前にあげたものだったなんて、考えるわけがないだろう・・!
これを俺が借りたとして、もし赤司に見つかれば・・・。
だめだ。考えただけでも恐ろしい。

いや、でも待て。これはラッキーアイテムだ。つまりラッキーアイテムを身につけている俺にそんな危害が加わるとは思えん。

ということは借りても赤司に見つかることなく、今日一日有意義に過ごせるのではないのか・・!?


「おーい、緑間くん大丈夫ー?」

緑間の手から肩が解放され自由になった名前は、緑間の目の前で手を振りながら反応を窺う。


今度は黙っちゃったけど大丈夫かな・・?


「名前、これは有難く貸してもらおう。だがこのことは絶対に誰にも言わないで欲しいのだよ。特に赤司には!」

「うわっ!急に話すからビックリしたよ!?・・・征ちゃんに?うん、まぁ言わないけど・・。」

「済まない。それじゃあ俺は退散するのだよ」

「え?あ、うん?」

名前の言葉を聞き、緑間は左右を確認するとうさぎのボールペンを素早くポケットに隠し足早に去っていく。

名前は一瞬にしてどこかに去って行った緑間を見て、頭を傾げながらも自分の席に戻った。

「・・・相変わらず面白い人だなぁ」





「名前、これはどういうことだ」

「え、何が?」

「これだ」

赤司はそう言って名前の筆箱を指さす。
開けっ放しになっている筆箱には特に異変はなく、可笑しな点など見当たらない。

「・・・筆箱がどうかしたの?」

「お前は馬鹿か?俺があげたボールペンがない。見て分からないのか。・・・昨日まで、否、少なくとも今日の朝まであったはずだ。どこにやった?まさかなくしたわけじゃないだろうな」

「ちょっ、なんで私が征ちゃんからもらったボールペン持ってきてるって知ってるの!?」

「質問に答えろ」


まさかこんなにもすぐに気が付かれるとは思っていなかったのか、名前はどう答えればいいか分からなくなっていた。

緑間くんには征ちゃんに言っちゃ駄目って言われてるし・・。どうしよう。
嘘ついてもすぐバレそうだし。でも緑間くんを裏切ることもできないよ・・!

「あ、えと、家に忘れただけだよ?」

名前のあからさまに不自然な様子に、嘘をついていることなどお見通しだった。

「オレの言葉を忘れたのか?少なくとも今日の朝まであったはずだと言っただろう」

「・・・あ」

「二度目はない。本当のことを言え」


上から見下ろされ更にその威圧的な態度の赤司に、寧ろもう真実を知っているのではないかと告げたくなる。


ああ、でもこの人は自分からじゃなくて相手に言わせないと気が済まないんだろうな・・。
・・・緑間くん、ごめんなさい。


「み、緑間くんの今日のラッキーアイテムで、それで、今日1日だけ、貸しました」

震えている為か少し途切れ途切れになりながらもそう告げる。

「・・・ほう。」

「あの、でも!1日だけだよ?だから・・」

「駄目だ」

「っ、それに、緑間くんだよ?」

「駄目だ」

徹底的に否定され言葉をなくす。

ただボールペンを貸しただけなのに・・!
そこまでダメダメ言う事ないじゃん!!


「こないだオレが言ったことを忘れたのか?・・・お前はオレのものだ。それはお前自身だけじゃない。お前が持ってるものも使っているもの、すべてだ。」

「そ、そんな・・!」

「オレものに手を出す奴は誰であろうと許さない。・・・ましてやオレがあげたものを貸しただと?ふざけるのも大概にしろ」


名前が何も言えず言葉に詰まっていると赤司はそのまま教室から出ていってしまった。

多分緑間くんの所に行ったんだろうな・・。


「はぁ・・。緑間くん、本当にごめん」
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