「征ちゃん、あんまり黄瀬くん苛めちゃだめだよ?」
「オレに命令するな」
「泣いてたよ?可哀そうに・・」
赤司の言葉をスルーして黄瀬を見る。黄瀬は今はもう泣き止んで青峰や黒子と楽しそうに話している。
早くも仲間と打ち解けたようでホッと安心する。
名前が黄瀬を見て嬉しそうにしている姿を見て赤司は眉間にシワを寄せた。
「・・・気にいらないな」
「またそんなこと言って!」
名前の声が聞こえた黄瀬はチラッと二人を見た。
そこには先ほどの鬼のような赤司とは打って変わって、ムスッとした顔はしているがどこか穏やかな様子の赤司がいた。
「・・・なんかさっきと凄い雰囲気違うんスね」
急に喋り出した黄瀬を不思議に思って視線の先を見れば、名前と赤司がいた。
「あ?・・あぁ、名前は赤司の幼馴染だからな」
「え!?そうなんスか!?」
驚いてまた二人を見れば、運悪くも赤司と目が合ってしまった。
・・・なんか睨まれてる気がするっス・・・!
◇
「桃ちゃんすごーい!もう黄瀬くんのデータができる!」
「頑張ったよー。でも凄いよ、きーちゃんは絶対伸びるよ」
「きーちゃん?また面白いあだ名考えたね」
話しながらもデータを取る手を止めない桃井。
その熱心さに自分もこうしてはいられないと意気込んだ。
「よしっ!じゃあ私はおいしいドリンク作ってきます!」
「うん!頼みましたー!」
軽く敬礼をしていく名前を見て笑いながら見送る。
ホント可愛いなー名前は!
◇
「あー疲れた!ちょっと汗流してくるっス」
「おー、早く戻れよ」
青峰に一言告げ水道に向かう。
思ったよりも練習はきつく掻く汗も半端な量ではない。
「ん?・・あ、苗字さん」
「黄瀬くん?どうしたの?」
水道に向かえばそこでは名前がドリンクを作っていた。
なにやら真剣につくっていた為に声を掛けるのを一瞬戸惑ったが、今日助けられたことのお礼を言っていないことを思い出し思い切って声を掛ける。
「汗流しにきただけっス!」
「あ、じゃあボトルどかすね」
名前が水道のスペースを開ける様子をボーっと眺める。
赤司っちの幼馴染か・・。そんな感じ全然しないんスけどね・・。
「そーいえば、皆私のこと名前だし黄瀬くんも名前で呼んでいいからね?嫌じゃなければ、だけど」
「え!?・・あ、えっと、じゃあ名前っちって呼ぶっス!」
ボーっとしていた為に、一瞬何を言っているのか理解ができなかった。
「名前っち?何それ!なんか桃ちゃんとむっくんに似てるね」
そう言って嬉しそうに笑う名前になんだか胸がくすぐったくなった。
「はい。できたてのドリンク!良かったら飲んで?」
ニッコリと笑顔でドリンクを渡され咄嗟に手を出す。
お礼を言おうにも胸のあたりがざわざわして、声を発することができない。
「・・・あ」
やっと声が出たと思った頃には名前は既に体育館に戻っていた。
「まださっきのお礼も言ってないのに・・。」
情けないなと思いながらも手元にあるドリンクを見れば心なしか顔がニヤける。
「一番にドリンクもらえた」