「あの・・今日からバスケ部に入る黄瀬涼太なんスけど、どこに行けばいいっスか?」
2年の途中からではあるがバスケ部の入部を決め体育館に向かった黄瀬。
だが意気込み過ぎてか、まだ部活が始まっている様子はなく部員は誰一人としていない。
その中一人忙しそうに駆けまわる女の子を見つけた。
バスケットボールを磨いたり、ボトルを運んだりしていることからマネージャーであると判断し、黄瀬は申し訳なさそうにその子に話しかけた。
「ん・・?あ、君が黄瀬くんか!こっち来て」
「?はいっス」
自分のことはマネージャーにも伝わっていたのかと安心し、後ろをついて行く。
「私はバスケ部マネージャーの苗字名前。よろしくね。で、これから部室に案内するんだけど、くれぐれも無礼はないようにね?ちゃんと挨拶しないとだめだからね?」
「大丈夫っス!俺こう見えてもちゃんとしてるんスよ!」
元気にニコニコと答える黄瀬に名前は溜息を吐いて、少し先に見える部室に目を向けた。
・・・きっとこの子は苦労するだろうなぁ。なんか能天気な感じだし。
「はい。ここが部室だよ。じゃあ、頑張ってね」
「あ、はいっス!」
元気に返事をしてノックを数回してから部室に入っていく。
名前はその姿を見ると、まだ残っている仕事をしに体育館に戻って行った。
「今日からバスケ部に入る黄瀬涼太っス!よろしくお願いします!」
部屋に入るなり自己紹介してガバッと頭を下げる。
「ああ。待っていたよ」
声が聞こえ黄瀬は頭をあげた。そこに見えたのはカラフルな髪色の人たち。そして、自分が憧れた青峰もそこにいた。
青峰がいたことに嬉しくなったが、まずはキャプテンに挨拶しなくては!と思い一番背の高い紫髪の人の元に向かった。
「あの、よろしくお願いします!・・それで、俺はまず何をすればいいっスか?」
「えーなんで俺に聞くのー?赤ちんに聞いてよ。俺わかんない」
「え?・・・赤ちん?」
キャプテンだろうと思った人物はキャンプテンではなかった。
黄瀬はきょろきょろと周りを見渡したがそれらしき人はいない。
「キャプテンはどこにいるんスか?」
「黄瀬」
「・・・?え、・・あ」
自分の名前が呼ばれ、少し下を見れば赤髪の人に睨まれた。
あれ?なんかいきなり死亡フラグっスか・・!?
「死にたいのか?」
「えぇぇぇ!?」
背はお世辞にも高いとは言えないが、押しつぶされそうな威圧感のせいか黄瀬はプルプルと震え涙目になる。
キャプテン、怖あぁぁぁ!!
俺もうやっていける自信ないっスよ・・!
「こら!何新入部員苛めてるの。泣いてるじゃん」
「・・・名前」
部室には似合わない声が聞こえ後ろを振り向くと、さっき部室まで案内してくれたマネージャーが立っていた。
心なしかキャプテンからの威圧感も、周りの部員の空気も和らいだ気がする。
「そろそろ始める時間だよ?」
「あぁ」
椅子から立ち上がり名前の横を通る。
「黄瀬。着替えたらすぐ体育館」
「・・!は、はいっス!」
赤司はドアから出る寸前で黄瀬にそう告げると、体育館に向かっていった。
「あーよかった。紫原からの呼ばれ方(ちんを抜かして)ちんが来てくれて」
「あっ、また口の周り汚い!早く行かないと怒られるよ!」
「はーい」
ハンカチを取り出して紫原の口元を拭きながらそう告げると、のそのそと赤司の後について行く。
「青峰くんも、そんな本ばっか読んでないで早く行く!」
「ああ゛?そんな本ってなんだよ!」
「いいから行きますよ」
紫原に続いて他の部員も体育館に向かっていった。
名前は部室に残された涙目の黄瀬を見た。
・・・これからが思いやられるな・・・。