「あれ?火神くん、頬から血出てるよ?」
「あ・・?あー、さっきの体育でボール掠ったんだよ」
「そうなの?私絆創膏持ってるからあげようか?」
「おー、サンキュー。」
体育の授業が終わり着替えて教室に戻ってくると、頬から薄らと血を流している火神が平然と座っていた。
そこまで酷い怪我ではなかったが、血が垂れるのは少なかろうが多かろうが、邪魔である事には変わりはないだろう。
そう思った名前は鞄から絆創膏を取りだし、火神に声を掛けた。
「あ、顔だから見えないでしょ。貼ってあげるよ。」
「わりぃな。頼むわ」
名前は絆創膏を手に取り火神に近づくと、血をティッシュで拭いてから傷口に絆創膏を貼り、ニコッと微笑む。
「はい、できた」
「・・サンキュ」
名前に至近距離で微笑まれた為、頬を染めながらそっぽを向いてお礼を言う。
普段部活中に怪我をした時も、マネージャーである名前に手当てをしてもらうことは多いが、顔に怪我することはほとんどない為その距離に不覚にも緊張した。
「火神くん」
「うおっ!?・・く、黒子・・。」
「名前さんに手当てしてもらったあげくに、微笑まれたからって調子に乗らないでください。しかも名前さんの絆創膏・・・剥がしていいですよね。」
「おまっ!やめろ、取んなよ!手を伸ばすな!!」
怪我を手当てした後名前は自分の席に戻り、火神は自分の席に深く座りなおすと後ろから黒子に話しかけられた。
そして今さっき貼ってもらった絆創膏に手を伸ばす黒子を必死に止める。
「ったく、絆創膏ぐらいで怒んなって!そんなに欲しいなら貰ってくりゃいいだろ」
「だめです。名前さんのものは僕のものでもあります。」
「おい」
「名前さんも名前さんですよ。火神くんに優しくするなんて・・。ちょっとお仕置きしないとだめみたいですね。」
「俺の扱い酷くねっ!?」
そう言うと絆創膏に手を伸ばすのを辞めて、自分の席から立ち名前の元に向かう。
「名前さん」
「ん?何?」
「足、捻ったみたいなんでテーピングしてください」
「えっ嘘!?じゃあとりあえず保健室行こう」
バスケット選手なのに大変!と言い、黒子の足を気遣いながら保健室に向かう。
「あれ、先生いないね・・。じゃ、私がテーピングするからそこ座って」
保健室に着いたが、先生は不在らしく他の生徒も誰もいない。
名前は近くにあった箱を開き、テーピングに必要な材料を取り出す。
黒子は素直に椅子に座ると右足をだし、名前が来るのを待つ。
「お待たせ。・・ん?あれ、まったく腫れてないけど・・本当に捻った?」
「はい。凄く痛いです。」
「・・・そっか」
無表情すぎて分かんないや。でも黒子くんが嘘つくとは思えないし、テーピングした方がいいよね・・?
名前は不思議に思いながらも黒子の足を固定し、テーピングをし始める。
「・・・名前さんが跪いて手当てしてくれるなんて、なかなかいいですね。僕の視線のはるか下に名前さんがいるって言うのも・・なんか興奮します。」
「・・・おい」
黒子の言葉に突っ込むがテーピングの手は止めない。
マネージャーというのもあり、なんだかんだ言って心配しているのだ。
「名前さん・・今日、火神くんにも手当てしましたよね。」
「・・・あれ手当てって言うのかな・・?」
「しかも絆創膏まであげて」
「あーうん」
「名前さんはそんなに僕に苛められたいんですか?」
「なんでそうなった」
切りのいいところでテーピングの手を止め黒子を見る。
目が合うと怪しい微笑みをしながら名前に手を伸ばす。
「苛めて、欲しいんでしょう?」
「っちょ」
手が伸びてきたかと思えば、その手は肩を押しふら付ついて後ろに倒れる。
名前が倒れると黒子は名前の上に跨り、手を固定して妖しい微笑みを浮かべる。
「黒子くんっ!足に負担掛かるから、どいて!」
「あぁ、足は捻ってないので安心してください。」
「え」
そう言って、名前に跨ったまま名前の顔に近づいていく。
そして、あと数センチで距離がなくなるというところまでくると横にズレて名前の耳たぶを甘噛みする。
「っ・・黒子くん、やめて」
「名前さんが僕以外に触れないって言うなら辞めてあげます」
「そんなの無理だよ!」
「名前さん、勘違いしないでください。」
「・・・っ!」
カプリと首を噛み、ゆっくり名前から離れる。
「要請しているのではありません。・・・命令です。」
end