「だめだ、全然わからない・・!」
「どうしたんですか?」
「黒子くん・・!お願い助けて!」
休み時間、国語の問題用紙と睨めっこをしていた名前は、ついに諦めたように机にうつ伏せになった。
だが、そこに黒子が現れたことによって名前はガバッと机から頭を上げ、涙目になりながらそう告げた。
「・・・いいですよ」
涙目とその言葉、グッときました。
ニヤッと妖しい微笑みを浮かべて名前の前の席に座る。
「で、どこが分からないんですか?」
「・・・全部・・。だって、これ物語じゃないから・・!説明文苦手なんだよ・・!」
「いいですよ。最初から最後まで調教してあげますよ」
「え」
「どうしたんですか?」
「いや、なんでもない。そういう言い方もあるんだなって思っただけ!・・・よろしくお願いします」
全部教えてもらうのは気が引けたため、如何わしい言葉が聞こえても反論はせずペコリと頭を下げる。
でも絶対調教って言わないよ・・!なんか黒子くん笑ってるし!!
「はい。じゃあまず僕のことは先生と呼んでください」
「・・・呼ばなきゃダメ?」
「ご主人様でも構いませんよ?」
「先生、お願いします!!」
ダメだ、黒子くんに口で勝とうなんて思っちゃいけない・・・!
ってかご主人様って、もう勉強教える気ないでしょ!?
「まず、ここの下線部をよく読んでください」
「はーい」
言われた通り下線部に目を向け、集中して読む。
その間黒子は徐々に名前に近づき、数センチの距離に縮めて名前が読み終わるのを待つ。
名前さんの真剣な顔を間近で見れる機会はなかなかありませんから。
それに、ここまで近づけばきっと驚くだろう。
ニヤケそうになる顔を必死に抑えて、苦戦している名前を眺める。
「・・・ん、読み終わった・・って近っ!!」
「すいません。名前さんがあんまりにも真剣だったので、僕も精一杯教えてあげようと思って・・。」
「あ、そうだよね、ごめん。うん、いいよ。」
「ならこの距離で教えますね」
ションボリした顔をすると名前がだいたい許してくれるのを把握している黒子は、一瞬ションボリした顔をし、名前がいいと言った瞬間にニコッと笑ってより距離を縮める。
にしても近すぎるよ・・!
なんで学校の机はこんなに小さいの!?前かがみになっただけでもかなり至近距離なんですけど!?
「はい、じゃあここ解いてみてください」
「・・・あ、はい」
近距離のまま軽く説明を受けて、解くように指示される。
うーん、分かったような分かんないような・・。
黒子の説明によって四択中二択までには絞れたが、どっちにしようか悩み、シャーペンがその二択で彷徨う。
「言い忘れてましたけど・・・間違えた分だけ、キスですよ」
「は!?」
よし、こっちにしよう!と思った瞬間にそう告げられ、ポトリとシャーペンを落とす。
「ちょ、黒子くんそれ聞いてないよ!」
「ん?」
「いや、ん?じゃなくて!だめだからね!しないからね!?」
「名前さん、もう忘れたんですか?」
「何を!?」
「よ・び・か・た」
「いや今そんなのどうでもいいよ!!」
名前がそう言うと、黒子は名前の口に人差し指をあて、これ以上喋らないようにする。
「名前さん、言う事を聞かない生徒はお仕置きですよ?」
「!」
名前の口に人差し指をあてたまま、ニコッと微笑む。
「お仕置きは、そうですね・・・キス、ですかね?」
end