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「苗字は同じクラスだからな。とりあえず、声をかけてみろ」

「いきなりそんなこと言われても無理ですよ。それに話題がありません」

「あいつ時々練習見に来てるし、今日も練習見に来ますか?・・・とかでいいんじゃねえか?まずは話しかけねえとなんもできねえじゃねーか」


火神くんに相談したのはやっぱりミスだったかもしれません。挨拶すらできないのに、いきなり話しかけるなんて無理に決まってるじゃないですか!バカですか?いや、バカでしたね。

「分かった。じゃあ、一緒にいくか」


グイッと火神は黒子持ち上げ歩き出した。


「苗字!」

「え・・・火神くん?」

急に話しかけられ名前はどうしたのかと、声がした方に振り返った。
そこには普段あまり会話をしたことがなかった火神がズカズカとこっちに向かい、その腕には黒子が宙ぶらりんになっていた。

「お前、時々練習見に来てたよな。今日も来んのか?」

「あぁ、んーどうしようかな」


名前は帰宅部なので普段はそのまま家に帰るだけなのだが、暇な時に友達と色々な部活の見学をしていた。


今日は確かドラマもないし買い物もないよね。

「・・・よし、今日は見に行こうかな。でも、なんで急に?」

「そうか。・・・で苗字、こいつ知ってっか?一応、同じクラスなんだけどよ」


火神はズイッと黒子を名前の前に押しやる。
さっきまで二人の会話を聞いているだけだった黒子は急に前に押し出され内心パニくっていた。


「・・・黒子くんだよね?知ってるよ。バスケの練習見に行ってるし」

「・・・え」


苗字さんが僕のことを知っていた・・・!しかも僕がバスケ部だってことまで知っていたなんて!てっきり、僕の存在自体知らないと思ってました。


黒子は誰が見ても名前が好きだと分かるぐらいピンクのオーラを放ち、幸せに浸っていた。

「それに、バスケの練習中凄いよね。パスがスイスイ通っちゃうんだもん。初めて見た時ビックリしちゃった。だから、黒子くんとは話してみたいなって思ってたんだ」

「・・・えと・・その」


僕も、話してみたかったです。と呟いたが、名前に届くことはなく、その声を辛うじて聞きとったのは火神だけだった。


そんな小さな声じゃ誰も聞こえねぇよ!!と言いたくても言えず。

「・・・じゃあ俺らはそろそろ行くか。昼休みももう終わるし。じゃあ、苗字あとでな」


「え・・・あ、うん!またね!」

黒子くん・・・最後なんて言ったのかな。聞こえなかった。


さ、さよなら。とまたも小さな声で名前に言い、火神に連れられ席に戻った。

「(今度は聞こえた!)・・・うん!黒子くんも、またね!」

「・・・!」



火神が黒子を席に連れ戻すと黒子はまたピンクのオーラを放ち幸せに浸っていた。

「良かったな」

でも苗字よくこいつの声が聞こえたな。俺でもギリギリだったけど。



あれから授業が始まり、火神はこれからどうするか考えていた。

苗字は今日の練習見に来るって言ってたし。なんか作戦でも立てるか。
とりあえず、話せたから第一段階はクリア・・・か?否、でもあれって話したに入るのか?
やっぱ二人だけで話せるようになんないとだよな・・・。

チラッと後ろを見てみると、今だにピンクのオーラを放ちボーっとしている黒子がいた。

・・・前途多難だな。
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