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雲に乗っている夢を見た。そこには金髪の天使がいて、わたしはその天使から雲からできた綿菓子を受け取って食べた。あまいなあおいしいなあと思ってあっというまに食べ終わると天使は「好きなだけたべていいからね」と笑う。綿菓子がなくなった棒で雲をすくった。やっぱりあまくておいしいなあ。そうやって何度も何度も綿菓子を食べて気づくと雲はわたしが座っている部分にしかない。でも綿菓子を食べたい。食べたら落ちる。どうしよう。

「あっ」
「うわっ」

落ちたと同時に目を開けると目の前に飛び込んできたのは天使の金髪。

「あ、あの、雲全部食べちゃってっ」
「はあ?」
「えっ?……あれ、ジロちゃん?」
「はーもーやっと起きたし」

わたしはジロちゃんにおんぶされていた。「重い」「あ、ごめ、おりる」そしてジロちゃんは不機嫌全開。もうちょっと愛想良くできないものかという感じなんだけどジローは自分が乗り気じゃないことに対してはとことん興味をなくす。めんどくさいこととつまらないことは大嫌いだ。

「オメー部活中寝てんじゃねーよー」
「わ、わたし寝てたの」
「部室で」
「…あっ…作業してたんだっけ」
「跡部まじキレてたぞ、明日かっわいそー」
「えっ…」
「オレしらなーい」

不機嫌なジロちゃんは超ムカつく奴へと変身する。いつもの天使みたいなふわふわジロちゃんの面影はそこにない。

「でーなんかー忍足がージロー家近いんやから送ってやりとか訳わかんねーこと言って、岳人と一緒に帰っちゃって。樺地は跡部が連れてっちゃって、ちょたに頼もうと思ったら宍戸と特訓とかいうしーひよは当然いねーし」
「…」
「跡部車なんだからついでに乗せてけばいーのに、オメーもオレも」

なんか本当に申し訳ない。下手したらわたしジロちゃんより重いかもしれないし…うわ、申し分けなさすぎる。

「うう…ごめんねジロちゃん」
「…」
「…怒ってる?」
「もう怒ってないからいーよ」

ジロちゃんはそう言ってわたしに手を差し出す。握っていいんだろうけどなんかほんとにいいのかなってもやもやしてたら「おせー!」って手をつかまれた。いちいちわたしはめんどくさいなと我ながら思ってしまった。

「さっき雲とかなんとか言ってたじゃん、あれなに」
「なんかね、雲が綿菓子の世界にいる夢みたの」
「なんかあったまわるい夢」
「ひ、ひど…!」
「じょーだんだCー」


さっき夢のなかでみた天使より倍以上あくどい天使が笑う。





悪戯にわらうよこがおの矛盾
(080522)
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