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もう遊ばないでなんて言える権限は全くない。一体私は何人目の彼女なのだろう。実際は聞きたくないから何人目だとか聞かないけど正直気になって気になって気になって気になってしかたない。毎日同じことを延々と考える私の頭の中にはもはやニオしかいない。くやしいけどそれは事実なのだから否定はしないのだけれど。
大体遊びの付き合いのひとりでいいと言ったのは私だし、何より私には割り切れるという自信があった。その頃は興味本位で付き合ってみたという気持ちのが強かったのだ。けれどそんな考えは甘くて、いつの間にか私はニオに夢中でニオをひとりじめしたくてニオの一番になりたいと願うようになっていた。とにかく頭のなかはすぐニオのことでいっぱいになる。重症だ。


「私のこと好きよね」
「おう、当たり前じゃろ」
「…」
「何じゃ、どした」


ニオはいつも通り私の肩に手を乗せてこちらに引き寄せて私の顔をのぞきこむ。ニオの目を見ると何も言えなくなってしまう癖はいつまで経っても直らないままだ。その私の癖をよく理解しているニオは私の扱い方がとても上手い。わかっていながらも居心地がよくてついニオの思うがままになってしまう。


「私はニオが一番好きだよ」
「おーうれしいこと言ってくれるのう」
「ほんとに、…本当に、ニオが好きだよ、大好き」


名前を呼ばれて頭の後ろを引き寄せられて、そのまま唇が触れた。離れたと思ったら次は乱暴に唇を奪われた。とろんと瞼が落ちてゆく。
額を合わせたまま、俺も、と囁くニオの息が唇にかかる。その言葉も何人に言ってきたの?私だけに言って、私だけに触れて、私だけ抱きしめて、私だけを見ていてよ、お願い
心の中の黒く重たい影は消えずに、より色濃く影を落として足元から沈めようとする。それでもいい、むしろ私はニオを想って生まれた影ならいっそそこに沈んでしまいたい。




かがやく沼なら沈んでもいい
(070111)
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