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「あっかやくーん」
「ちょっとこっちきんしゃーい」

まるで紅白のような配色の目立つ頭が視界に入って思わずため息がでる。うっわまじでいきたくねー…つーか二年の教室まで何しにきてんだよあの人たち。どうせならなまえ先輩連れてくればいーのに、そういうのに関しては気が回らないっていうか、まあ多分わざとそうしてんだろうけど。あの二人ならやりかねない。

「おたんじょうびおめでとー」
「わーいわーい」
「なんすかいきなり」
「てっめ祝いにきたのに何だよその態度!」
「いだだだだ痛い丸井先輩重い」
「ブンちゃん自分の体重考えんしゃい」
「そうっすよー潰れるー」
「おまえら俺が傷つかないと思ったら大間違いだからな」
「って違う違う本題からずれとる」

いつも話をまとめず投げっぱなしな仁王先輩が珍しく話を進めようとしていることに驚きながらそのまま話を聞く。丸井先輩は機嫌悪そうにガムをくちゃくちゃ噛んでいた。この人は本当、気持ちのいいぐらいに気分屋だと思う。

「今日は赤也くんの誕生日だから、赤也くんの大好きななまえ先輩をあげます」
「えっまじっすか」
「あ、やっぱ好きなんじゃ」
「は!?ち、ちがっ、別に、そんなんじゃ」
「わかりやすすぎだろい」
「ちげーっての!」

にやにや嫌な笑みを浮かべる二人の話はこうだった。なまえ先輩をあげるというのは今日一日(といっても放課後)遊ぶ約束をとりつけたという意味らしい。しかも俺と先輩二人で。こればかりは仁王先輩と丸井先輩にグッジョブとお礼を言いたくなった。

「頑張れよ」
「告れよ」
「は?!」



ついに授業が終わり放課後になる。部活は奇跡的に休みということが判明した。一応ちょっと髪にワックス付けなおして変なとことかないか確認をした。よし俺かっこいい!

「赤也くんきたー」
「なまえ先輩!」
「赤也くん誕生日おめでとう〜」
「ありがとうございまっす」
「けどせっかくの誕生日なのに遊ぶのが私なんかでいいのかな」
「いや!そんな!先輩がいいんす!」
「えー?ならいいんだけど…」

んで先輩はいつものごとくすげーかわいいしその先輩が俺のために時間を割いてくれたとかちょっとした奇跡だ。ありがとう仁王先輩丸井先輩

それから先輩と飯食いにいってそのときプレゼントもらってそれから俺の希望で先輩と一緒にプリクラ撮って(※家宝)、あっという間に夜も更けてしまった。真田副部長に怒られる時間みたいに憂鬱な時間はあんなにも長く感じるのに、楽しい時間はどうしてこんなにも早く過ぎてしまうのか。ゆっくりゆっくり進んだらいいのに。なかなかそうはいかない。

「今日は楽しかったっす」
「私もだよ」
「ありがとうございました、まじで」
「いやいやそんな、付き合わせたの私だし」
「え?」
「実は…仁王と丸井に頼んで、赤也くん誘ってもらったんだ」
「えっ…ええ?ええええええ」
「…意味、わかるよね」

そうやっていつもみたいに大人っぽい笑顔じゃなくて、ちょっと照れくさそうにはにかんだ先輩がもうめまいがしそうなぐらい可愛くて腕を引き寄せてそのまま自分の腕に閉じ込めた。控えめに俺の制服の背中を握る力の弱さが伝わってきて、なんかもう、どうしようもないくらい、言葉にならないくらい


「俺今世界一の幸せ者っす」


Happy Birthday Akaya!
(080925)
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