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一年の時からすきですきですきですきでどうしようもなかった。すきになったきっかけなんてあまりに単純だったしほとんど一目惚れに近いといってしまったほうがいいと思う。
英語の小テストで赤点をとった罰として英語教師にノート運びを頼まれた。抱えたら前が見えないくらい積み上げられたノートを俺はめんどくさくて一度に持つことにしたんだけど持って職員室を出た瞬間ノートの山は崩れ落ちた。あーもうほんとめんどいめんどくさすぎる!軽く舌打ちをしたのち大人しくノートを拾い始めると、向かい側から何冊かノートが差し出された。んでそれがまあ、好きになったきっかけってやつ。俺って思いこんだらそのままってタイプだからもう意識し始めたときから想いは増すしかなくて。でも俺は仁王先輩とか丸井先輩みたいな女子慣れした人たちとは違って女子とはなすのとかすげー苦手だし普通に声をかけるのもなかなかできねーしでなんだかんだで一年。会話もなにもまともにしたことないまま告白したら相手は俺の存在すら知らなかった。一応立海テニス部の切原赤也って名前は校内に知れ渡ってると思ってたのになんかすげー恥ずかしい。なんか自意識過剰な人間っぽくね?うわー
羞恥心から情けないぐらい小さな声で俺は名前をつぶやく。なんだか切原赤也って名前でさえ恥ずかしくなってきたような気がする

「キリハラくん」
「!な、なに!」
「えっあの大丈夫かなーって…それだけ、なんだけど…」
「大丈夫じゃねーよふられたんだよ俺アンタに」
「うん、でも私知らない人とは付き合えないから」
「…へこむ〜」

彼女が言っていることは間違いなく正論だ。俺だって名前も知らなかった女となんて付き合いたくもないし。そうとは言っても、ふられたのは紛れもない事実なわけで、辛くないといったら嘘になる。結構、うん、つらい。
しかし、よく考えたら「知らない人」とは付き合えないわけであり、「知っている人」ではまた違うのではないだろうか。それでまた告白したら結果は変わるのかもしれない。かもしれないじゃねえ、変わる!絶対!俺はこんな簡単に負けるような人間じゃない。そんな人間に成り下がるつもりもない。


「…じゃあさ、よく知り合えばつき合ってもいーってことだよな(極端とか気にしたら負けだ!)」
「うーんと…」
「じゃ俺超がんばるから、好きになってもらえるように、すげーがんばる」
「ちょ、待ってキリハラくん…!」
「聞かねー!」
「ええ〜…」

「俺、ほんとおまえのこと…す、すきで!そんな理由じゃ諦めらんねーくらいすきなの」
「…」
「だから、俺にチャンスください、お願いだから」

頭下げるのなんてみっともないとか思われているだろうか。それどころか気持ち悪いとか思われているかもしれない。瞑っていた目を開け、頭を上げる。どうしたらいいのか困っているのが彼女を見たらすぐにわかって、その原因が俺だと思うとすげー不謹慎だけど何だかうれしかった。さらに困らせるのなんて十分わかっていたけど俺はもう一度念を押すみたいにはっきり「すきだ」と言った。見据えた目が動揺を物語っている。俺が歩き出した背中に彼女の視線を感じた。
すきな子を困らせるのって、なんか、ちょっとたのしい、かもしれない。っていやいや何考えてんだ俺










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