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え、あの、うん

「俺おまえのこと…その…な、なな、ななんつーかあ…」
「(噛んでいる…)」
「うまく言えねーんだけど…ええっと〜…」

髪はくねくねうねりの強い黒髪で、背は私より頭一つ分くらい高い。ちょっと目がつっててきつそうだ。今は眉毛が下がって困った顔をしている。困りたいのはこっちなんだけどなーって思いながらも彼の次の言葉を黙って待つことにした。

「すっ、すきです」
「えっ、あっごめんなさい」
「ちょっ…え、早っ」
「だっだだだだって私あなたのこと知らないし…」

真っ赤になった彼の顔は一気に青く変化する。なんかまずいこと言っちゃった…?で、でも知らない人とつき合える訳ないじゃん…!わ、私そんな軽い女じゃないから!

「俺のことしらねーんだ…そっか…」
「ご、ごめん口に出てた…?」
「思いっきり…」
「…すみません」
「いや、俺が悪いし…うん」
「…」
「…」

なにこの雰囲気ー!気まずい!耐えられない!この雰囲気をどのようにして打破したらいいか、それ以前にできるのかと考えていると彼は悲しそうな顔をしたあとに小さい声で「キリハラアカヤ」と呟いた。キリハラアカヤくん。アカヤって変わった名前だなー。名前をつぶやいたきり俯いたままになってしまったキリハラくんになんて声をかけていいかまったくわからなくて、とりあえず名前を呼んでみることにする。

「キリハラくん」
「!な、なに!」
「えっあの大丈夫かなーって…それだけ、なんだけど…」
「大丈夫じゃねーよふられたんだよ俺アンタに」
「うん、でも私知らない人とは付き合えないから」
「…へこむ〜」

頭を抱えてへなへな座り込んでしまったキリハラくん。そんなになってしまわれるとこっちが困ってしまう。男の子がこんなふうになってしまっているのを初めてみた私はどうすることもできないし、大体告白されるのもこれが初めてだった。答え方もどうしたらいいのかもわからない。困った。

「…じゃあさ、よく知り合えばつき合ってもいーってことだよな」
「うーんと…(極論すぎる…!)」
「じゃ俺超がんばるから、好きになってもらえるように、すげーがんばる」
「ちょ、待ってキリハラくん…!」
「聞かねー!」
「ええ〜…」

「俺、ほんとおまえのこと…す、すきで!そんな理由じゃ諦めらんねーくらいすきなの」
「…」
「だから、俺にチャンスください、お願いだから」

初めて私のことを好きだと言ってくれた男の子は、私のことを諦められないと言った。あまりに強引な言葉たちは私の頭を駆けめぐっては元の位置に戻り、また巡る。キリハラくんが真っ正面から私の目を見据えた。キリハラアカヤくん。不思議な男の子。キリハラくんはもう一度、今度はしっかりと私の目をみて「すきだ」と残して行ってしまった。キリハラくんの目は強い光を持っててちょっとこわい。私こわいのだめなのに。




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