テレビの音が煩わしい。

グラビアアイドルが卑猥な言葉を口にさせられて、やだぁもおと媚びたように声を上げると、目の前の男の穴が非道く蠢いた。その穴を塞ぐ己の指から伝わったので、喜んでいるのがわかる。あんな見え見えの演技に興奮する理由がわからない。基本的にこの男が考えている事はわからない。それなのに身体の変化だけが生々しく、湿っていく音が聞こえる。日々に押し流されて、灰に染まった心が色濃さを取り戻す。

彼はレディファーストに抜かりが無く、フェミニズムに生き、女性のためならばしんでしまいそうな、とんでもない男である。君のためならしねる?この愚か者が。そのまましんでしまえ。感情を込めた動きは、必然的に乱暴になった。ソファに座って足を組む此方に向けられた穴がひくつく。卑屈になる。この僅かな隙間に、排水口より不衛生な仄暗い闇に、私を捕らえて離さない何かが隠されているのだろうか。真実の口でもあるまいし、嘘を吐いたからと言って離れられないのは困る。この男と生きていくつもりも死ぬつもりもない。

「右端のレディが、っく、可愛いな」
「はぁ」
「イッチーに、言って、も、無駄か…っん、ふ…」

集中しない貴方と私。お笑い芸人のボケ、すかさず入るツッコミ、笑い声。そんな中、不釣り合いな息遣いと、だらしない地下水の滴る音。言葉通り右端を押し上げてやると、反り返った背骨と喉。

レディは貴方だ。私にとって貴方は、幾多の男共の妄想と白濁に埋もれて消されていくあの画面の向こうの女性と同じです。そんな事も知らずに身を委ねるなんて。

愛しくてたまらなくなってしまう。

このテレビが砂嵐に変わるまでに、あと何回彼を達せられるだろうか。そう考えるだけで愉悦に顔が歪む。

「はっ、…はぁ…っ、イッ、チー…っ!」

END



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