レディには月に一度、本物の天使になるための試練がある。

だからオレがその試練の最中にどれだけ愛を囁いても、ごめんなさいと申し訳なさそうに跳ね退けられてしまう。耐えられない。耐えられないんだ。一日でも愛が無いなんて。そんな時は他のレディの心を攫うのだけれど、大概疲れてきた。もういいじゃないか、生まれながらにして君達は天使だよ。見たらわかる。自分に自信がないレディもみんな、気付いていないだけさ。純白の翼が背中にあるのに。足元や後ろを見つめるばかりで、小さな羽根は見落としてしまうんだね。

この話をリューヤさんに出来ない。リューヤさんは真面目な人だから、未だにふらふらと歩き回るオレを知ったら心労でどうにかなる。教師、大人、道理に適っていない事が嫌い。カッコいいねぇ。リアリストだからオレのこう言う話は好きじゃないんだ。
それ以前に恋人だから殴られるかもしれない。悪くないな。逞しい腕は守るためだけにあるんじゃないってわからせてあげようか。オレはレディじゃないと改めて知らしめるのもいいね。

そうだよ、月に一度の試練なんて来ないから、いつまでたっても天使になんかなれないんだ。待てど暮らせど、鈍痛も腰痛も来ない。血だって見ない。嘆かわしい。希望なんてやっぱりないのだろう。


ベッドが軋む。床にずり落ちた掛け布団の視線は受け入れず、粘膜同士が求め合う音が煩わしく感じられた。腰を上げろ。命令口調は嫌いだって言ったの忘れてる。リューヤさんの中でオレはその程度の存在。何が悲しくて金曜日の夜に、恋が溢れる金曜日の夜に、オフが重なってしまったのか。ボスを問いただしたいけれどこの気持ちを、本来使うべき場所じゃない所に性器を押し込みゆるゆると突き上げる男にすら言えないのに、他人になんてもっと。

翼がない背中をまじまじと見つめて、俺以外とはセックスすんなって、レディを柔らかく愛する事を否定するアナタに言われても、ときめかないと思っていたのに。
オレの、穴は、小さすぎる。アナタの愛を受け入れるには。オレの、体は、大きすぎる。アナタの愛を受け止めるには。

一際大きくぐぢゅん!と音がすると、鳴らした筈なのに、ぢわっとした熱から出血したのがわかる。いきなり、奥まで乱暴に突っ込むからだよ。どこもかしこも堅いんだから考えてくれ。まあ今はオレが強請ったせい。性教育は実践で、正教育は失敗。
無色のローションが今、皮肉にもピンク色に染まっているのだろう。血と精液とオレとリューヤさん。セックスが気持ち良くないから、こんなに思考が下落してイく。

エロいな、といきなり引き抜かれて言われる。異物感の代わりに排泄感。どろりとした液体。

しぬほどほしかったてんしへのしれんとおなじかんかく。レディの秘密から漏れるのはサラリとしたものではなくて、どこか粘着いたものだと知っている。今、まさに今、同じくらい粘度のあるものが、太ももを伝い、膝の隣に落ち着く。四つん這いの犬なのに天使になってもいいの。

オレの中で恋心がリューヤさんの性器で、このタイミングで押し潰されて垂れ流したのは運命だ。どうしようもなく嬉しくて震えた。神様は天使を作るらしい。じゃあリューヤさんは神様だね。愛から程遠いオレを指名して、悪い神様だ。

「神宮寺、痛むなら」
「あ、も…すき、すきすきすきすきすきすきすきすきすきすき」

腰が痛い。鈍痛がする頭。まだ流れていく血。

意味がわからないと言う顔のリューヤさんに抱き付いて、純粋な好きを紡ぎ続けた。支度は出来たから合否を早く知りたい。まだ偽物だ、あとこの試練を命絶えるまで何回受けたら、真の天使になれるのか。

オレにはわからない。

END?



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