切り裂いた水面、熱中症になる。頭が痛む。呼吸する度に少量の水が入ってくるのは幼い頃から変わらない。塩素の味がするのに塩分が足りないなんておかしな話だなあと思いながら、手も足も動かすのを止めたくなかった。ざばざばとプールに傷を付けるのが楽しい。自分の中に眠っていた酷く攻撃的な部分が、このひとかき、このひとけり、に、込められている。人にはあんなに気を使うのに、声を出したり暴れたりしない青を相手にめちゃくちゃをするのは、狂気に満ちている証拠だろう。優しくなんてないし、ゴーグルいっぱに広がる景色を心底綺麗だと思うのに、無限に続かない体力を憎いとは思わない。壁が見えた。ターンするためには思い切り勢いをつけないといけない。ぐんぐん、と、迫る障害物。今日も明日も明後日も十年後も百年後も、こうやって、泳いでいるのかもしれない。そう思ったら、どうしようもなく笑いが込み上げてきた。百年後は多分、しんでいる。十年後は多分、わりとすぐに来るけれど、思った通りに体が動くのかわからない。気付いた時にはホイッスルが鳴っていた。手を付いたら、三位で、またなんだか、好きになってしまって、困っている。

END



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