星を見に行きたいとロマンチストぶった事を真琴が言い出し、うちの前に自転車、その荷物置きにはレジャーシートとクーラーボックスが用意されるまで、一時間もかからなかった。どう考えても寒い。今は真夏だけど。そんでもって夏休み初日だけど。
寮から帰って早々、家の前で手を振るこいつが見えて眩暈。ニコニコしながらネットで拾った星空の画像を拡大コピーしたものを広げて、話を一方的にどんどん進めちまった。夏の大三角になんて興味はない。そもそも星自体にそこまで興味がない。あいつらは燃えカスだ。その無念がギラギラ光ってるんだろ。なんでそれを綺麗だと思うのかが理解できない。花は綺麗だ。今咲いているから。風は綺麗だ。今吹いているから。蝉はうるさいけど綺麗だ。今鳴いているから。

現在進行形っていうのは俺にとってかなり重要な事だった。止まりたくない。ずっと進んでいたい。どんな時でも。それは水泳をしている時だって、眠っている時だって同じで、のほほんとしている真琴にはわかりっこない感情なんだ。うごいていなきゃしんでいるのとかわらない。あくせく動く体がないと、俺には価値なんてない。勝ちもない。純粋に負けたくなかった、ありとあらゆる現象に。若いうちは時間があってよかった、なんて言っている大人は何をしていたのだろう。こんなにも一日は短い。
渋々漕いでいる自転車の速度にも真琴と俺の差は表れている。こっちのペダルはギイギイ鳴って耳障りなのに、少後ろを走るアイツの自転車は大人しく車輪を回転させるだけだ。待って待って、と、汗と焦りが混じった声が、また一段と遠くなるよう、ランニングを思い出しながら足を回す。アスファルトの熱と絡まって、縺れそうだ。それでもまだ、平坦な道を疾走し続ける。そうしたらそのまま失踪事件に発展するかもしれない。松岡凛を知る人がいない場所へ行きたい。出来れば、必死な姿は、見られたくなかったりする。特に、昔馴染みには。いなくなった所で検索願いでも出されてすぐに探し出されるんだろうな、クソ、世話焼きは面倒だ。

瞳の中に飛び込んできた夏の日差しは、色素の薄い俺たちを攻撃してくる。容赦なく。
なんでこんな時間から星をどうこう言い出したんだろう。まだまだ明るい。向日葵が上を向いている。真琴の考えている事はよくわからない。周りに何も言わずにずっと哲学しているイメージがある。ばっと感情を吐き出す俺の相手をしながら、腹の中ではぐるぐる、消化液と同じくらいの量の、言えない本音やらなんやらあっても、あいつは死ぬまで所か死んだ後にだって言わない気がする。閻魔も悪魔も神様も天使も、真琴の隠したドロドロの部分を両手でひらけない。




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