自分の知らない凛がいる事を、真琴は平然と受け止めていた。四六時中一緒にいる訳ではないのだから、隠し事や見えない部分があっていいのだ。夕飯の献立、泣いた夜のビージーエム、オナニーの回数、クラスの女の子からの告白、何もかも口を噤んで、コップに注いだソーダ水でウォータースライダーのように流し込む。炭酸独特の柔らかい火傷を負いながら、真琴は画面を見つめる、ギザギザを纏った彼の頬を撫でてみる。片手間に触られた事に腹を立てたのか、膝を抱えてしまった赤紫に、両手全部の指紋が伸びきってしまいそうだった。小さな不機嫌が大きなすれ違いになる前に機嫌を直さなければいけない。りん、こっち向いてよ、と、聞こえるか聞こえないかのボリュウムで発すると、リモコンでピピピと音量を上げられたテレビがよく話すばかりで。意思の疎通がはかれない。手に持って行った透明度の高いソレを、真琴は凛の頭上で土砂降りに変えてみせる。ビシャビシャ、と、傘を持つ事も手で防ぐ事も許さず、雲もないのに降りてきた水に、短い悲鳴が上がった。それでも真琴は止めない。甘く粘着質な愛を彼に注ぎ続けた。昔だったら泣いていたはずの幼馴染が、ギロリと黒目を此方に向けている。その事実に高揚しながら。

END



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