※れいちゃんが虫。




















ふもうなのでかえります。出来れば、土に。たまごからはかえりません。だって、悲しい。

薄く黄色に色付いた何百と言う卵の中で、片隅、呼吸を諦めかけている者がいた。それは、自分がここから出て行くと、関節がなく体毛がびっしりと生えた醜悪な容姿である幼虫になってしまう事に絶望したレイという個体である。何故か、産まれる前からきちんと意識があった上に、自分がどういった生き物で、どういった変態で成長していくか、理解していた。博識なばかりに、世界に飛び出していく気力を削がれてしまったのだ。隣の丸い兄弟たちは誰もが皆、希望を持っているようだ。世界へと放たれる事に。
何をそんなに喜べるのか本当にわからないし、美しくない瞬間が一時でもあるのならば、このままでいい。心底レイは想っていたために、ざわめくハルの足音にも心が躍らない。ぎしぎしと、風で体重を預けている葉が揺れると、誰かが囁いた。

もうすぐそこだよ、ほんとうにあっというま、わたしたちがこのうちゅうのいちぶになるまで。

レイは絶望にくれた。どうせなら、もっと、誰から見ても綺麗だと感じてもらえる、例えば、そう、花になりたかった。ずっと見上げ続けている空でもいい。ここからは遠いらしい海でもいい。とにかく、今の自分が許せない、愛せない。


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -