ぢゅうぢゅう降る雨を、私はとても受け止めきれない。

神宮寺の体に掬う華はそう云って、こうべを振った。なにせ、その雨ときたら本当に留まる所を知らないのだ。雨雲など見当たらないにも関わらず、頭の天辺から足先からじゃばじゃばと濡れそぼつばかりであった。憂鬱と湿気を孕んだ彼は、妊婦のように慈愛に満ちた瞳で聖川を椅子の上から見上げる。
部屋中が、腐敗した滅紫と二藍のくすんだ色で溢れ返っていた。置かれた遠国を思わせる家具の数々も、上部半分しか見えていない。いっとう背丈のある箪笥ですらその状態だった。
聖川は何か、紡ごうとして黙りこくる。かけるべき言葉など、とうに尽きていた。所帯を、持っている、己の、偽善で。救いたいのではない、救われたいのだ。
もごり、と、神宮寺の唇は芋虫と変わらぬ速度で開く。天井も、屋根も、彼の中には存在しない。そうだ。ただの人間なのだから。どうやっても体内に建設物を造る事は不可能だった。

乱暴に。番傘を洋風の部屋で広げて。風圧によって舞った屑と、新たにぎらぎら落ちたむらさきを、聖川はしゃがんで拾った。どうかしている。夕日を宿した長髪の上、差し出した傘はなんの意味も持ちはしない。

「お前の心に降る雨は、まだ止まないのか」

貴方、私を愛してくれないもの。そうでせう。そうでせう。
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