ジャングルにてランデブー

この星でも最大の熱帯雨林を保持する地方、ゴンガガ。
モンスター出現数が多いここではあるが、今日のジャングルはいっそう騒がしいようだ。

『あぁ、もうッ!!モンスター多すぎ!鬱陶しい!』

誰にともなくそう叫んで、カエデはタッチミーを一刀両断した。
しかし、周りを見渡せば、グランドホーンにバジガンディ、それに、まだまだタッチミーがいるのである。

『うううぅぅぅ……』

ぎりりっと歯ぎしりしながら、恨めしそうに、自分の走ってきた方向を見た。

そもそも、カエデが一人でこんなところにいるのは、至極簡単な話、仲間とはぐれてしまったからである。

『(ちゃんと合流できたら、あいつなんかドツキ回してやるぅ……)』

今頃は村に到着しているであろう、仲間の顔を思い浮かべると、無性に腹が立った。

『あたしは、とにかく、村に行くんだからッ!!!』

カエデは刀を握り直すと、闘気をみなぎらせた。
カエデはこう見えて、ウータイでも由緒正しいサムライの家系の者なのだ。
モンスターの群れを相手にして怯むような女の子ではない。

『うおりゃぁぁああああっ!!!』

まずは、正面に構えていたグランドホーンに切りかかり、肩のあたりから袈裟切りにすると、返す刀で胴を一文字に切り裂いた。そのまま勢いで三発ほど攻撃を加え、その巨体が沈むのを見届ける。

それから、バジガンディの方へ振り向き、駆け出した刹那、

『!!?』

視界の外から、タッチミーが拳を振り上げ、飛びかかって来るのを見た。

『(やば……避けられない!)』

目を見開いたカエデの目の前で、

――パシュンッ

何処からか現れた銃弾に、タッチミーの身体が貫かれた。

一瞬の出来事に、カエデは唖然とした。

次は、連続的に銃声が響いて、あっという間に、モンスターの群れが一掃される。

『え……何?何が起こってるの?』

半ばパニック状態のカエデの目の前に、赤い塊が音もなく落ちて来た。
それを見て、カエデは一瞬、肩をびくつかせるが、

「大丈夫か?」

そう声をかけてきた人物がまとうマントだと分かり、ほっと胸をなでおろした。

声をかけてきたのは、長身の男で、黒い革製の服に赤いマントを羽織っている。
大腿のホルスターに、拳銃が提げられているところを見ると、先ほどモンスターの群れを一掃したのは彼のようだ。

だが、そんなことより、カエデは、男の顔に見とれていた。

『(わあ……なんて綺麗な顔……。
  黒髪は長くてつやつやでさらふわだし、肌はめっちゃ白くて透明だし、目はルビーみたいな綺麗な赤で、睫毛長くて、鼻は高くて、唇なんてぷるぷるしてそう……)』

じっと見つめるカエデの様子に、首を傾げながら、男はもう一度訊ねた。

「大丈夫か?
 それとも、私の顔に何かついているのか?」

すると、カエデははっとして、

『だだだだ大丈夫です……いや、綺麗なお顔だなあと思っただけで、な、何も変なことなんてありませんよ、えぇ……』

早口にまくし立てて、真っ赤な顔でうつむいた。

そんなカエデの様子に、男は苦笑すると、大丈夫なら心配はいらないな……とつぶやく。
どことなく優しい表情なのも気になるのだが、あの……、とカエデは男に訊ねた。

『このあたりに村があると思うんですけど、何処か知りませんか?』

「ああ、ゴンガガ村か。知っている。ついて来い」

そう言われ、カエデは喜びいさんで男の後をついていった。

村へ行く道中で話を聞いたところ、男の名前はヴィンセント=ヴァレンタイン。
あのジェノバ戦役やオメガ戦役にも参加したのだというから、強いのも頷ける。
今は気ままに旅をしているらしく、このあたりにいたのも、その関係だとか。

ただ教えてもらうだけもアンフェアなため、カエデの方もいくらか身の上話をした。
ウータイのサムライの家系であること、その慣習に則って武者修行の旅をしていること。

武者修行の旅をしている、と聞いて、ヴィンセントは驚いたようだが、何か考えごとでもするような顔をしたくらいで特に何も言わなかった。

そして、村の入り口にさしかかったころ、カエデはかねての質問を口にした。

『そういえば、さっきから、あたしに、優しい視線を向けてたのはどうしてかって聞いてもいい?』

その質問にヴィンセントはフッと笑うと、カエデの頭をくしゃりと撫でた。

「放っておけない……そう言えばわかるか?」

『え……それって……どういう……?』

?で埋め尽くされた頭で聞き返す前に、ヴィンセントは歩きだしていた。

「くれぐれも無理はするな……そういうことだ」

少し離れたところからそう言われて、カエデは首を傾げることしかできなかった。

『まあ、でも、有名な人と知り合えるっていいことだよね!』

カエデはにっこりと笑顔をつくると、自分を置いて行った仲間を探すべく、村の中へ踏み込んだ。



それからのカエデの旅だが、ピンチになると、何処からともなくヴィンセントが現れて助けてくれるとかくれないとか。偶然なのかは未だにわかっていない。





――――――
あとがき

案外長くなっちゃったよ……(汗)
しかも、オリジナル時間軸で、勝手な設定入れちゃったけど、大丈夫だろうか……。
まあ、引き取っていただけると幸いですよね。
リクエストありがとうございました。
                    拾壱黒木


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