不法侵入は犯罪です。@

『……』

識はとっさの出来事に口をつぐんでしまう。

『(首元に宛がわれたそれは恐らく刃物で、それを突きつけているのは恐らく男だろう。
 年齢は二十代半ばほどか……。
  侵入した目的は……)』

思考の海に沈みかけた識に、次は、前方の暗がりから手が伸びる。
その手には抜き身の刀が握られているわけで……。

「さっさと吐きやがれ。
 ……さもねぇとテメェの首、掻っ切るぞ」

物騒な台詞とともにこれも首へ宛がわれる。

『(こっちも男か……年齢は二十代後半かな?
  ドスの利かせ方からして極道関連か?
  まぁ、それにしても……)今のご時世、刀は使わないだろうに……』

知らず知らずのうちに要らないことを言っていた。

すると、二人の男の殺気があからさまに増した。
空耳かもしれないが、あ”ぁん?、とか聞こえた気がする。

背後に立つ男も、気配からして笑っているようだが、なんだか目が笑っていなさそうだ。

「へぇ〜、そんなに死にたいんだ?」

そんなことを言いながら刃物の切っ先をグイグイと押し当ててくる。

『(嗚呼、さすがにこれはまずいかな?)』

識が内心そう考えていると、不意に居間の方が騒がしくなった。


「某、もう我慢なりませぬ!」

「Hey!待てよ真田!
 猿にも大人しくしとけって言われただろうが」

「でも、この家の住人を殺しちゃうのは流石にまずいんじゃない?」

「おぉ!やはり分かってくださいますか!?前田殿!」

「でもよぉ、ソイツが俺たちをここに連れてきた張本人だったらどうすんだよ」

「えぇい、五月蠅いわ!駒の分際で!
 待てばよいだけのことであろう」

「ウム、ワレも同胞に賛成よ、サンセイ」

「イエヤスゥゥゥゥウウウウウウッ!!!?
 今すぐ頭を垂れろ!斬滅してやるッ!!」

「ほら、三成、静かにしろと言われてるだろう?」

「黙れぇぇぇええええええッ今すぐお前をッ……」

「「「「「お前が黙れ!!!」」」」」


「……」
「……」


『(……いったい何人いるんだ、ここ……)』

がやがやしだしたと思うと、

「佐助ぇぇぇええええッ!!」

居間から赤い服の青年が飛び出してきた。

すると、背後の男があからさまに動揺する。

「え……ちょっと、旦那!?
 俺様が呼ぶまで大人しくしててって言ったでしょう?」

しかし、赤い青年、そんなことはお構いなしに、

「こンの愚か者ぉぉぉおおおおおおッ!!!?」

背後の男を殴り飛ばした。

すると、どんな馬鹿力なのか、一昔前のコントのように玄関の扉を突き破って男が飛んで行った。

『……私の家が……』

赤い青年はそれだけで飽き足らず、男――迷彩服を着ているようだが、自衛隊か何かだろうか?――のところへ行って口論を始める。

「佐助ぇ!いくら見ず知らずの女子とはいえ、刃を向けるなどッ……
 漢の風上にも置けんぞ!!」

「あのさぁ、旦那。俺様だって旦那のこと考えてこんなことやってんの。
 いくら女の子でも油断は出来ないでしょうが」

「しかし、その者は家主で間違いござらん!
 それを脅しつけるなど、言語道断でござるッ!」

庭先でギャイギャイ騒ぐ二人。

いくら家の周囲を塀と生垣で囲んでるとはいえ、かなりの近所迷惑になっていることだろう。

『(仕方ない。あの二人を止めるか。
 そして、玄関の扉を回収しよう)』

そう思って外へ出ようとすると、腕を掴まれる。

「おい、逃げようったってそうはいかねェぞ」

振り向けば、声から予想した通り、どこの組の方ですか?という雰囲気の男――識に刀を突きつけていた男だ。――が識の腕を掴んでいたわけで……。

『あの……手を離してもらえませんか?
 修理のために扉を回収したいので……』

「ンな物、後で猿に直させればいい。
 その前に、俺たちをここに連れてきた目的を聞かせてもらおうか」

予想外の台詞に、はぁ?、と識は素っ頓狂な声をあげた。







― ― ― ― ―
あとがき

やってしまいました。BSR逆トリ。
大人数で収拾つかなくなりそうですが、頑張ります。
割と口調違ったりするのでご了承ください。

もちろん最初に出て来たのは蒼紅の従者組です。
全然名前出てこないけど……。

あとのメンバーは声だけです。
当ててみてね。

読んでくださりありがとうございます。


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