第五話 面倒事がやって来る

乱暴に開かれた扉の向こうにいたのは、四人の男たちだった。
そのうちの三人は、そろいの軍服に、特徴的な三つ目のヘルメットをかぶった神羅兵。
そして、残りの一人が気だるげに口を開いた。

「邪魔するぞ、と。
 古代種はここで間違いないな?」

まず、目につくのは、鮮やかな赤髪か。
半目に開いた緑の目の下にはタトゥーのようなものが入っている。

しかし、レイディアが気が取られるのはそんなことではない。
かなりだらしなく着崩しているとはいえ、見覚えのあるスーツ……。

『(タークスか……面倒なことになったな……)』

そんなことを思うレイディアの横でエアリスが唇を尖らせた。

「タイミング、悪いなぁ……二人とも、かまっちゃダメだよ」

さらりとひどいことを言うエアリスに、赤髪のタークスは眉をひそめた。

「俺にかまうな……だと?」

しかし、エアリスはお構いなしに、ねえ、クラウド……とクラウドに目配せした。

「ボディガードも仕事のうち?
 何でも屋さん、でしょ?」

そうだが……とクラウドは微妙な表情で頷く。
すると、エアリスは、はしっとクラウドの手を取って懇願した。

「ここから連れ出して、家まで連れてって!」

そして、あっ……と気づいたように付け加える。

「もちろん、レイディアの方もね」

思いもよらない提案に、レイディアは苦笑をこぼした。

『私はいいよ。少なくとも、お前に守られるほど弱くはない』

それを聞いて、クラウドは明らかにほっとしたようだが、こほんと咳払いして、もったいぶったような口調で言った。

「引き受けましょう。
 しかし、俺を雇うための報酬は安くない……」

すると、エアリスは、じゃあねぇ……と考えこむが、ぱっと表情を輝かせると、

「デート一回!」

そんな破格の報酬を提示したのだった。

そんな報酬の内容にまんざらでもなさそうなところを見ると、所詮、元ソルジャーを名乗るとはいえ、ただの若い男か……なんていう印象が拭えない。

『(なんだかしまらないな……)』

そうため息をつきつつ、レイディアは自分の腰に得物があることを確かめる。
そして、入り口に立つ男たちの方へ向き直ろうとしたとき、クラウドが何かぶつぶつと言っているのを耳にした。

怪訝そうな顔で何か呟くクラウドの姿には、いささか不気味さを感じざるをえない。

「……おねえちゃんら、こいつ、なんか変だぞ、と」

タークスですら不気味に思ったのだろう、やれやれといった様子でレイディアたちに同意を求めた。

そうだな、確かにおかしいとは思う。
レイディアとしてはそう言ってやりたかったが、

「黙れ!神羅の犬め!」

とクラウドが噛みついたせいで、言葉にはならなかった。

だが、この台詞は、神羅兵を怒らせるには十分すぎたようで……。
三人の神羅兵はあからさまに苛立った様子で銃を構える。

「レノさん、やっちまいますか?」

しかし、レノと呼ばれたタークスはちらちらとこちらを見ながら、考え中であることを伝える。
主に、レイディアの存在が気になって仕方がないのだろう。

一触即発という空気の中、不意にエアリスが一つの提案を持ち出した。

「ここで戦ってほしくない!お花、踏まないでほしいの!」

いきなりそう言われ、神羅兵たちは呆気にとられたようだ。
流石にレイディアも驚いてエアリスを見つめ返した。

ところが、エアリスは悪戯っ子のように笑うと、

「出口、奥にあるから」

とクラウドとレイディアに囁いて、二人の手を引いて駆けだす。

後ろで神羅兵とレノが軽く騒いでいるのが聞えたが、レイディアは振り返らず、教会の階段を駆け上がった。

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