その瞳から、涙がこぼれた。それは女の武器か、甘い雫か。なまえちゃんのこころは酷くやられているだろうに、そんな風に見えてしまうのだ、クソ野郎のおれには。

「わたしなんか全然見てないもの、っ」
「・・・」
「わたし、邪魔しか、できない」

そんなことはねぇ。そう散々言ってきた。彼女は理解しようとしないが、事実ルフィは、気にかけている。事あるごとになまえちゃんへ視線をなげる。抱きしめるときのあいつの満たされたような顔。それでもきみは物足りない。

「わたしばっかり、っ好きで・・・」

髪を撫でれば涙に拍車がかかる。おれじゃない、この子はルフィに泣かされている。さあなまえちゃんの幸せはどこだ。

「も、っもうやだ・・・」
「・・・」
「もう、やだ、」
「・・・」

この船でみっともないことはしたくなかった。だから胸に秘めておくと誓った。でも、なまえちゃんがサジを投げた。それはおれの背中を押して崖から突き落とした。いや、もしかしたら飛べるかもしれない。ずっとずっとずっとずっと、想っていた。めちゃくちゃに甘やかして、ぐちゃぐちゃに抱きたい。おれの一切を突っ込んで、かき回して、飲み干して、おれ無しじゃいられなくなって欲しい。

「なまえちゃん」

うん、と鼻をすする。きっといつものチンケな言葉で慰められると思っている、濡れた美しい瞳。そうだ、おれをみてくれ。ああ、でもそんな顔で、

「触れていい?」
「・・・え、」

目を丸くして息を飲んだなまえちゃんが、可愛くて、好きで、ひん抱いた。くそったれ・・・もう戻れない。戻れないじゃねえか。

「・・・おれにしてよ」
「サンジ、うそ」
「おれがラクにしてあげる」

黙らせるように頭もすっぽり抱え込んでそう言うとなまえちゃんは震える手で、おれのシャツを握った。なまえちゃんの体温、なまえちゃんの香り、全部いまにも犯したい。

「大切に大切にしてあげる」
「・・・」
「なまえちゃんが・・・なまえが好きなんだよ」

・・・おまえと殺しあってでも、教えてやる。強く、優しいだけじゃ繋いでおけない絆もある。

なまえちゃんの涙は刺激的な塩加減。ゆっくり唇を離すと、目のはしにうつったタバコがちょうど全部燃え殻になった。なあルフィ、おれがさらうよ。恋は遅いもん勝ちだ。





ガラスの灰皿








「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -