拍手再録》五条先生の忙しい誕生日の話


自慢じゃないけど僕は忙しい。自分の誕生日だろうがクリスマスだろうがお構いなしに任務やら家のクソみたいな用事で呼び出されるぐらいには。
僕は通勤が面倒だから高専の敷地内に住んでて、可愛い恋人も学生寮にいるとくれば、物理的には近くにいる。けど、ゆっくり一緒に過ごせる時間はあまりない。
あまりないから、僕の部屋で寝起きしてもいいんだよって言ったこともある。でもいつも断られる。

「先生がいないのに先生の匂いがするベッドで寝るのはいや」

ってさぁ、可愛すぎない?

で、今日は誕生日なわけだけど。
日付が変わってすぐにプレゼントを貰って、でももう任務に出なきゃいけなかったから泣く泣く別れた。好きな子の可愛いおでこにキスして「行ってくるね、おやすみ」って部屋を出る僕の気持ち分かる?部屋から出られない呪いとか発生しねーかなーって呟いちゃったもんね。

あれからもうじき24時間。僕はようやく自分の部屋に帰って来ようとしていた。
愛しいあの子は学生寮で寝てる頃だろう。
去年は誕生日前日から出張になっちゃって、あの子も連れて行ったっけ。僕がプレゼントにハグを求めたらあの子は「そんなこと?」って言って、優しく抱き締めてくれた。
あー会いたい。
抱き締めたいってのは勿論だけど、あの子に抱き締めてもらうのは別格に好きだ。世界が優しくて温かいものに思える幸せなハグだ。

ま、夜が明けるまではそれもオアヅケ、我慢するっきゃないんだから考えるだけ辛いってもんだよね。
と思いつつ自室の鍵を開けたところでふと違和感に気付いて、違和感の正体に気付くと全自動で口元が緩んだ。
可愛い恋人が僕のベッドに眠っている。
や、確かに鍵は渡してたし何度か(いや、何度も)誘ってはいたけどさ?その度可愛い理由で断ってきたじゃん?どうしたのさ?
布団の可愛い膨らみの前でしゃがんで覗き込んでると、もぞもぞ動いて小さな声が上がった。

「…せんせ…?」
「うん、先生だよ。どうしたの?」
「お誕生日のうちにね…もういっかい、会いたかったの…」

…ってさぁ、可愛すぎない!?
こっちはもう口元ゆるゆるで情けない顔は自覚するところだけど、部屋が暗いのが幸い。僕の恋人は可愛いの塊だ。

「待っててくれてありがとね。シャワーだけ浴びてくるから一緒に寝ようか」
「先生、手…かして」
「ん?冷たいよ?」
「いいの」

布団から出てきた温かくて柔らかい手が、僕の冷えた手をぬくぬくの布団に招き入れてくれた。この布団の中いま天国だわマジな話。
可愛い手に導かれて、心配になっちゃうぐらい細いくびれに手が乗った。そのまま山の稜線をなぞるように腰を登ってなだらかに滑って太腿へ…って、ん?今、感触、んん!?

「ふふ、びっくりしてる」
「そりゃそーでしょ、え、待ってマジで?」

パジャマの下にヒモの結び目の感触があったんだよなぁ!!本当どうしちゃったの、恥ずかしがり屋さんのくせに!!
布団の中に手を突っ込んだまま、ベッドのふちに顔を伏せた。

「先生、今日はもうお仕事いかない?」
「行かない、ぜーっっったい行かない。5分待ってて手ぇ温めてくるから」
「ゆっくりでいいよ」
「僕がやだ、そのリボン僕が解く絶対」

愛しい子は起きがけのふにゃふにゃした顔でイタズラ成功を喜んでいる。
今の内に微睡んでいればいいよ、可愛いイタズラしてくれた責任は取ってもらうから。

そこから僕はシャワーのタイムトライアルをキメて雑に髪を乾かしてベッドに舞い戻ったわけだけど、愛しい子はとろとろ半分夢の中。
ごめんねぇとは思いながら、パジャマのボタンをひとつずつ外していった。

いつまで寝ていられるか、楽しみだね?
そういえば日付はもう変わってるけど、最高の誕生日になりそうだ。

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