拍手再録》五条先生の誕生日を祝いたい話


スマホが鳴ったと思って見てみれば、何とも嬉しいプレゼントが届いていた。
画面の中では、愛しい子が鏡を見ながらあれこれ服を身体に当てて思い悩んでいる。

「ねぇ野薔薇ちゃん、どうしよう何着て行ったらいいの?もう何着ても駄目な気がしてきたぁ…」

フレームの外から野薔薇の声で「裸にリボンでも巻けば」。イイね、それ。

「もー他人事だと思って…!」
「これ以上の他人事がどこにあんのよ」

それでも服選びに付き合ってあげる辺り、僕の生徒達は仲良しで可愛いな、と。

「どーせあの淫行教師、『何着ても可愛いけどどうせ脱がすよ』とか言うに決まってんのよ。悩むだけ無駄」

野薔薇、大正解。

「それよりプレゼント決まったの?そっちのが悩んでたじゃない」
「それなんです野薔薇様」

可愛いあの子は白いニットワンピースを身体に当てて見ている。あ、僕その服好き。

「だって五条先生だよ?銀座で値札見ないでお買い物する人だよ?先生がもらって嬉しいものなんて学生に調達出来るの?」
「だから裸にリボン巻けって」
「それはフィクション過ぎだけど、一応は考えたんだよぅ…」

ハ?マジで?

「ちょっと大人っぽい下着とか…でも恥ずかしいし…先生の歴代彼女なんて、絶対峰不二子みたいな人ばっかりだよ」
「金への汚さに関してはいたでしょうね、峰不二子」
「私はプロポーションの話をしていますっ」

そこであの子が鏡から振り向く気配があって、その直前で動画は終わった。映り込んでいた時計は現在時刻とほぼ同じだったし、今まさにこの会話が寮の一室で成されているに違いない。これは彼氏として放っておけないよね。


「もはや逃げ出したい…野薔薇ちゃん代わりに行ってよぉ…」
「誰得よそれ」
「何ひとつ決まらないよ誰か正解ちょうだい」
「まぁフロントホックと紐パンに勝るご褒美は無いかな」

シレッと会話に合流すると、愛しい子が悲鳴を上げた。野薔薇は死んだ魚みたいな目。

「せっせんせっ!?」
「ハーイ愛しの五条先生だよ。僕のために悩んでくれてるのとーっても嬉しいんだけど、ゴメンね、今から任務入っちゃったんだ」
「え…あ、そっか…」

見るからにシュンとしちゃって、食べちゃいたいぐらい可愛い。

「うん、だからもう行くよ、ハイ抱っこ」
「…んん!?」
「泊まりがけなんだよね、外泊許可はさっき取ったから心配しないで」

まぁ外泊許可出すの僕なんだけど。便利。
好きな子の抱き心地に癒されていると、汚いものを見る目の野薔薇が紙袋をポンと手渡した。

「野薔薇ちゃん、これなに?」
「フロントホックと紐パンよ」

野薔薇、期末考査は期待していいよ。

で、まぁ任務は秒で終わらせたよね。
元々日帰り出来る距離なのを伊地知に相談()して泊まりにして、自費でホテルのランク上げたっていうのは、可愛いこの子は知らなくていい。

「いつもながら、はぁ…」
「ゴメンね、ちょっと強引だった?」
「かなり、の間違いです。…でも許してあげます。先生もうすぐお誕生日だもん」
「誕生日っていいものだね」

綺麗な目がチラッと壁のデジタル時計に走った。あと1分を切ったところ。

「…先生ごめんね、プレゼント、何にしたらいいか分からなかったの」

シュンとしちゃって、可愛いが過ぎるんだよね本当、参るよ。

「金で買えるモノはね、正直どうでもいいんだ」
「じゃぁ何だったら嬉しい?」
「好きな子に抱き締めてもらいたいなぁ」

愛しい子は目をぱちくりとして、「そんなこと」と言った。そんなことって簡単に言うけどね、君のハグは世界を救うんだよマジな話。

「先生、座って」

『おすわり』って言ってくれてもいいよ、君だったら。促されるままベッドに座ると、僕の脚の間に可愛い子が立った。その目がまた時計を見る。

「先生、目隠し取ってもいい?」
「いいよ」

くすぐったいぐらいにそーっと、目隠しが首に下ろされた。
優しいこの子の腕が僕の頭を抱き寄せて、柔らかい匂いのする胸元に抱いてくれた。頭を撫でまでして。

「先生、お誕生日おめでとう。大好き」

もしかして僕って世界一幸せな男なのかもしれない。そんな風に思わせてくれる君のハグはやっぱり世界を救うんだよ。

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