夕暮、君を待つ

※モブ視点です。




JJテレビでADをしてます江出井といいます。長く続いているバラエティ番組で、街で待ち合わせ中の人を取材するコーナーを担当しています。
テレビ業界を志したのは、何しろ美しいものに目がないからです。女優さんとか俳優さんとか見放題じゃんという不純な動機です。(が、実際そんな見放題でもなかったですチラ見です)

只今取材対象を物色している真っ最中です。ディレクターさんとカメラマンさんの3人、芸能人はいません。人生こんなもんです。
人待ち顔を探すこと1時間、日が暮れてきました。今日は中々ヒットがないっすねーなんてカメラマンの亀羅さんと愚痴ってたところに、ディレクターの出入さんがそれはもう切羽詰まり過ぎて変な顔で駆け寄ってきて、亀羅さんの腕をバシバシ叩きました。
出入さんは「ヤバイ」と「見ろ」しか言えなくなってて、怒りで我を忘れてる…じゃないけど、語彙力が底辺に接してますぜ。
とにかく指差す方を見て、その瞬間出入さんに語彙力底辺とか思ってゴメンナサイと五体投地したくなりました。あれは語彙力を失う。

見たこともない!すごい!美人さんが!人待ち顔で!立っている!!

そこからはもう3人で首がもげるほど頷き合って、出入さんは女の子の喜びそうなコーヒーチェーンのホイップが乗ったやつを調達、亀羅さんはターゲットに警戒心を与えないよう控えめに待機(何せヒゲ面のおっさんなので)、不肖江出井が取材交渉に入ります。絶対に負けられない戦いはここにあった!いざ!いざ!!

「あのぅ、JJテレビの『待ち合わせ旅』と申しますが、少しお話伺えないでしょうか…?」
「えっ、はい…?」

声を掛けると美人さんはピクッと顔を上げて左右確認(貴女ですよ!)、きょとんと首を傾げ。はい可愛い!限りなく美少女!!

「この辺りで待ち合わせされてる方に取材してまして…あっこれ身分証です怪しくないです!失礼ですが、どなたかと待ち合わせされてる様子だったので…」
「あ、はい…待ち合わせ、です、けど」
「あっこれ!コーヒー!お嫌いでなかったらどうぞ!」

出入さんナイスタイミング。
そして差し出されると咄嗟に受け取っちゃう美少女良き。

「待ち合わせのお相手ってお友達か彼氏さんだったりします…?」

美少女さんは少し迷った後に頬を赤らめて(はい可愛い)コクンと頷きました。からの、ポツリと、「かれし…です」。あ゛あ゛あ゛尊いよぉ…!

「良ければ一緒に待たせてもらえませんか?彼氏さんいらっしゃったらすぐ退散しますんで…!」
「それはちょっと、どうでしょう…多分怒っちゃう」
「ですよね野郎がいたら気になりますよね!私がハンディで1人で撮ります、ほら出入さんあっち行って!」

シッシッ!と追い払うと、出入さんは私が今まで見た中で最速でハケていった。あんなに機敏に動けたんですね小太りのおじさんなのに。
ちょっと強引だったけど断れない雰囲気に持ち込んで美少女さんの隣に落ち着く。ヤバイ、夜なのにこの子の周りだけ明るい気がする。もしかして発光してます?
美少女さんはミズキさんというらしい。名前も美しい。
珍しい制服だと思って尋ねてみると宗教系の専門学校とのことで、今日は学外実習の帰りなんだとか。お祈りとかするのかな、美少女が祈るとこ見たいな。

「あのっ彼氏さんとの馴れ初めって、聞いてもいいです?どっちから告白したとか」

ミズキさんは桜色のほっぺに手を当ててウンウン悩んで(美しい)、言葉を選びながらとつとつと話してくれた。

「えっと、学校の…先輩です。告白、は…うーん、向こう…?でも先に好きになったのは私で…言うつもりは、無かったんですけど」

ウンもう分かります惹かれ合っちゃったやつですよね!ニヤニヤが止まんない!

「素敵ですねぇ…!彼氏さんのどんなとこを好きになったんですか?」
「好きなところ…」

またほっぺに手を当てて真面目に悩んでくれる。いい子過ぎないか?適当に『優しいところです』とかで躱せるとこやぞ?
しばらく悩んだ後にミズキさんはふやふやの笑顔になった(もはや徳が高い)。

「…何でも出来るひとなのに、優しくするのだけ不器用なところ」

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!
叫び声を心の中に留めた私を誰か褒めて!!なんか泣けてくる!!世界って美しい!!
尊いが過ぎるよ養いたい、彼氏さんの分も夢の国のパークチケットあげたい、楽しんできてくれ、カチューシャ付けた写真だけくれたらお姉さん仕事頑張れるから!

「あっこれ、内緒にしてくださいね?恥ずかしい」

すんませんこれテレビっす!生じゃないけど!
しかし照れ顔も可愛いな!何してても可愛いな!
彼氏さん大変なんじゃないかな、日常的に2秒に1回鼻血出たりしない?

その時ミズキさんの後ろからぬぅっと大きな手が出てきてバックハグのポジション。

「ミズキ、誰こいつ」

彼氏キター!え、顔面つよ、CGみたいなイケメンきた、え、ちょ、処理落ちなんだが?

「JJテレビの方で、江出井さんです。待ち合わせ中の人に取材してるって」

なっまっえ!覚えて!くださって!ご丁寧にどうも!

「ハァ?暇かよ。だぁからどっか店入ってろっつったのに」

いや口悪ぅでもイケメン!輝かしいイケメン!
まぁ警戒もするよね、この子が彼女だったら心配にもなるよね!

「お前ソレ何持ってんの」
「コーヒーもらいました」
「口つけてねぇだろうな、貸せ」
「あーっどうしてほとんど飲んじゃうの!」
「同じの買ってやるからキャンキャン言うんじゃねーよ」

大丈夫ですよ、妙なものは入れてませんよ…!でも、うんうん、心配になりますよね分かります。誘拐とかされそうだもん。
流れるように自然に頭ナデナデするのとか眼福なんで是非続けてください。
お、彼氏さんこっち見た。

「なぁオネーサン、もうコイツ返してもらえる?俺ら結構忙しいの。今も用事終わりにどうにか時間合わせてさ、週末のデートに着てく服買いに行くわけ。俺の彼女遠慮しぃだから滅多に買わせてくんねぇのに頼んで口説いてやっと今なの、1分1秒無駄にしたくねぇの。分かってくれる?」

それはもう。それはもう!
スタッフ3人でミズキさんを遠目に発見した時くらい激しく頷いた。ヘドバンくらい頷いた。
邪魔は致しません!どうぞラブラブしに行って!!つーかもう彼氏さんミズキさんのこと大好きじゃんよ気持ちは分かるけど!!美しいな!!
このイケメンが?何でも出来るのに?優しくするのだけ?不器用??ハーーー何があったん??その映画どこで上映してる???

とりあえず直角に礼をしました五体投地はミズキさんがお困りになると思ったので!
なんかもうエステでも行ったみたいに肌艶良くなった気がする。この業界入って良かったぁ…しばらく放心してたい。
と、思ってたら、彼氏さんがミズキさんの耳をきゅむっと両手で塞いで、頭上から(そういやすっごい背ぇ高いな)こっちを見た。

「今日のソレ放送いつ?」

アッこの人絶対録画して観るわ。
観るといい、観て悶絶するがいいさ。かぁーわいいぞー?
かぁーわいいぞー??
大事なことなので2回言いましたよ!




***

ネタポストより、『笑っ〇こらえ〇の番組内の、待ち合わせ中の人にインタビューするコーナーみたいなお話(中略)全国に惚気けてしまう恋人など』です。
ネタ提供ありがとうございます。

モブ祭りすみません。
ディレクター出入(でいれ)さん、カメラマン亀羅(かめら)さん、AD江出井(えいでい)さんでした。




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