合援鬼縁

04


 三人が記憶を取り戻しても三人の生活が変化することはそれほどなく、それぞれがタイミングを合わせて遊んだりと自由気ままに過ごしていた。
自由気ままに過ごしながら、八重たちは年を重ねていった。
 三人の記憶が戻ってから五度同じ季節が巡ってきていた。年を重ね少しずつ肉体的に大人になっていっても、精神的には大人といっても良い緋和たちは前世での経験値をどこにおいてきたと言うように、精神的に子供に帰ったかのように、かくれんぼやら鬼ごっこなどで日々精を出していた。
もはや、毎日のやる気をそこに持ってきているかのように、本格的な遊びと化していた。だが、本格的な遊びになっているという事実に気がつく大人は誰一人としていなかった。端から見ると、普通の遊びにしか見えないからである。三人で遊んでいるように大人たちは見ていたが、実のところ、その遊びには刀剣男子たちが混ざっていたのは三人しか知らない。
 そんな遊びに毎日精を出していたからか、八重たち三人は里の子供たちの誰よりも、女子でありながら機敏な動きと護身のための身のこなしができるようになっているのだが、その事実を知っているのは遊び相手をしていた刀剣男子たちだけである。
 とある本格的なかくれんぼをしていた日のことである、近所の山で鬼である短刀と柚から逃げていた八重はいつも遊んでいる範囲からすこし外れたところまで来てしまったことに気がついたのは、一息つこうと足を止め、周りを見た時のことである。

「ハァ……ガチで逃げ過ぎて疲れた。って、此処どこだろう?」

すこし落ち着いてくると、八重は冷静になってきたのか、自分の状況を把握できるようになってきた。毎日のように山で遊んでいるからか、周りの景色からして自分が今どの辺にいるのか理解した。

「あ、此処、もしかして里の皆があんまり近寄ろうとしない所の近所かな?」
って、なんで皆近寄ろうとしないんだっけ……??と、肝心な所を思い出せないでいる八重であった。毎日の遊びに精を出しすぎているからか、親の話すらろくに覚えていない八重は、肝心な部分を思い出そうと首をかしげながら歩いていた。考えながら歩いているためか、周りの状況を顧みずにいたからか、八重は自分が今現在歩いている場所が川の近く、川辺を歩いていることに気がついていなかった。気がついたのは、自分が足を滑らせ、川に落ちようとしている時だった。

「え、あ、やばっ」
「おいっ!!」

落ちる、そう思い目をつぶり、川に落ちる衝撃を待っていたが、いつまで経っても水にぶつかる衝撃が来ないことに疑問に思い、閉じていた目を開けると、誰かに抱き留められたことで、川に落ちなかったのだと理解した。
「あ、あの、助けて頂きありが、とう、ござい…ます」

最初は逆光で相手の顔が見えなかった八重だったが、次第に目が慣れて、相手の顔が見えるようになると、口にしていた感謝の言葉が驚きのあまり途切れ途切れになってしまっていた。

「ああ?考え事してるのは良いが、ちゃんと周りみて歩けよ。」

じゃあな。そう言って、八重を川岸に下ろすと、その人物はその場を去っていった。その後ろ姿を見送っていた八重はその場から動けずにいた。色々な衝撃を受けた八重はその場から動けずにいたのである。
フッと我に返った八重は、自分の目の前に長義が立っていることに気がついた。

「君は何をしているんだい?こんな所で。」
「あ、長義。え、あ、何してたんだっけ??」
「はぁ……、全く。そろそろ制限時間も終わるんじゃないか?」
「あ!そっか、かくれんぼしてたんだっけ、戻らなきゃ……」

 長義の指摘に、八重は自分がかくれんぼをしていたことを思い出し、集合場所に向かうようにその場から立ち去る。しかし、この場に来たときと同様に、八重は何かを考えながら歩いていたが、考え事の内容は来たときと違うことであった。

 八重が集合場所に来ると、緋和も柚も待ちくたびれたかのように、八重を迎えた。文句を言おうと口を開きかけた二人だったが、様子の違う八重に逆に問いかけた。

「八重ちゃん、何かあったの?」

柚のその問いかけに八重はハッとして、柚の方を見た。

「あの、えっと、鬼から逃げてたんだけどね、あんまりいかない所まで行っちゃってさ」
「この山であんまり行かない所……?それって、あの人の所じゃない?」

明確に示してない八重の言葉でも場所を把握した緋和の言葉に八重が飛びつくように聞き返す。

「あの人??あの人って誰??」
「うわっ!!どうしたの八重。そんなに焦って。確かその人は、この里でも変な意味で一目置かれている、鋼鐵塚さんじゃない?」

鋼鐵塚さん、何かを噛み締めながらそう呟いた八重の様子に、緋和はピンときた。

「ははぁん、八重、鋼鐵塚さんに一目惚れしたでしょ。」
「え!!そうなの?八重ちゃん」
「一目、惚れ……?これが?」

緋和の言葉に驚いて八重の顔を見る柚と、自分の気持ちの落としどころを探している八重と八重を生暖かい目で見ている緋和という不思議な空間が広がっていた。
 顕現してはいないが、三人の様子をとある空間からみている三人の近侍たちは、長谷部だけが複雑そうな表情で八重を見ており、長谷部のそんな様子を光忠たちがどうしたものかと、顔見合わせて長谷部になんと声をかけるか悩んでいた。


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