合援鬼縁

03



 思っていたよりも家族に祝われた為に、柚が自室に戻ったのは、日がだいぶ高くなった頃であった。柚が自室に戻ると、そこには八重と緋和が既に到着していて、寛いでいた。ついさっき来たような様子ではない二人の様子に柚は申し訳なくなり、謝ろうとしたのだが、柚の様子に気がついた緋和が先に言った

「あ、遅くなったとか全く気にしなくて良いよ!!柚ちゃん、今日誕生日だからね、まずは家族で祝わなきゃ!」
「そうそう。今日の優先順位は家族が先!!」
「二人とも…ありがとう。」
「あ、柚ちゃん、記憶戻ったんでしょ?」

今までの雰囲気を壊す様に言葉を放った八重に緋和が笑い、柚が驚いて居ると、柚の反応をみた八重が柏手を打つ、それに呼応するように一振りの打刀が顕れる。それを確認し、八重がもう一度柏手を打つと、桜とともにカソック姿の青年が現れる。

「主?何かありましたか?」
「ううん、ほら、柚の為にさ、姿見せとかないとね」

その青年、長谷部と話す八重の姿を見た柚は自分の中でなにかが解放されるような感覚がした。その感覚に戸惑っていると、長谷部の方から話しかけられた。

「ああ、記憶が戻られたのですね。柚様、燭台切には会えましたか?」
「え、あ、はい。ご迷惑をおかけしました。悩みも同時に解決しました。二人ともありがとう」
「いや、いいよ。光忠の面白い姿が見れたからね。」
「ああ、確かにアレは面白かったわぁ」
「ちょっと!!人の失態で笑わないでくれるかな!!」
「「あれ、光忠いたの??」」

勝手に顕現してきた光忠を話題に盛り上がっている二人に柚は問いかけた

「あの、なんだか、さっき例えようもないなにかが解放された感覚があったんだけど、なんなのかわかる?」
「……柚ちゃん、知りたい?」

 柚の問いかけに緋和がニヤニヤしながら聞き返した。その隣で八重も楽しそうに二人の様子を伺っている。八重と緋和の二人を怪訝な顔で見た後、気の毒そうな表情で、光忠は柚をみた。

「なにか、深刻なことなの?」
「……いや?全くもって安心安全なことかな。柚ちゃん、それはね、私たちもはっきりとそうだよ、って確証をもって断言できるわけじゃないけど、」

と、そこで言葉をきった緋和の後を引き継ぐように、八重が続いた。

「その感覚は、おそらく記憶が戻った段階では当時の近侍一振しか顕現できないみたいなんだけど、同じように記憶を持った人とその人が刀剣男士を顕現しているのを見ると、私たちの中で制限されていたらしい霊力が、解放されたみたいなんだよね。」

 これは、私たちの推測なんだけどね。と言葉を締めた八重に同意するように緋和がうなずく。そう言われてみると、なんだか光忠一振だけではなく、あと何振か顕現できそうな感じがするのを感じられた。
 柚が力の解放を実感している様子をほほえましいように見ていた八重と緋和であったが、いつの間にか密談していたらしい、光忠と長谷部が三人に話しかけた。

「あの、お伝えしたいことがあるのですが、よろしいでしょうか?」

どこか複雑そうな長谷部と光忠に三人とも、審神者時代を思い出したかのように、表情を引き締め、長谷部と光忠に相対した。

「何かあったの、長谷部」
「なにかあったといえばあったと申しますか……」

八重の問いかけに、言葉を濁す長谷部。なんとも煮え切らないその様子をみて、柚が今度は光忠に問いかける。

「光忠、どうしたの?」
「主の霊力が戻ってきたと同時なのかな、その瞬間に僕と長谷部くんにも新たな情報がもたらされたというか……」

 新たな情報、その言葉に緋和は首をかしげた。今更なんの情報が出てくるというのだろうか、そうは思いつつも、その情報が気になり、緋和がふた振りに自分の疑問点を問いかける。

「新たな情報って、何がわかったの?」
「あのですね、どうやらこの世界では、今顕現している俺たちが本霊になるようです。」
「本霊とはいっても、本霊に最も近い分霊ってところかな。この世界だと、僕たち本体は存在しているみたいだけど、審神者をという存在を認識されていないからか、本体が顕現するほどの付喪神の力をもっていないみたいで、本体からの力を貰いつつ、主たちの力によって顕現しているみたいで、本霊に最も近い分霊っていう例えが一番近いかな。」

 長谷部と光忠の話を聞いた三人は自分たちが思っていたよりも壮大なスケールの話に呆然としていた。そんな三人の様子を苦笑いしながら、長谷部が追加の情報を伝えてきた。

「それでですね、本霊に最も近い分霊という関係上、どうやら、同じ刀剣男士を顕現することができないみたいなんです。」
「なるほど、私たちで顕現させる刀剣男子はダブって顕現できない、とそういうことで良いの?」
「そういうことになりますね。おそらく皆様で被ることはないだろうとは思いますが……」

なにも言葉に出していないのに緋和たちの思考を読んだかのように告げた長谷部の言葉に三人とも苦笑いを浮かべるしかなかった。



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