合援鬼縁

02


八重の記憶が戻ってから数ヶ月後、柚の誕生日が迫っていた。八重も緋和も、柚が前世の仲間だった事を思い出しており、あわよくば柚もそうなのではないかと期待していたのだが、誕生日まであと少し、という時に彼女が浮かない顔をしていることに、遊びに来ていた八重が気づき、緋和を呼んで、柚の話を聞くことになった。

「あのね、変な事かと思うかもしれないんだけど……」

そう切り出した柚の話は、記憶がない人間にとってはつらい物だろう話だった。
柚曰く、2.3日前から、誰も居ないところで男の人の声がするという話で、日に日にそれがはっきりと聞こえてくるようになってきたとのことである。
その話を聞いていながら、柚の背後を気にしてしまうのは、記憶が戻った代償なのだろうか?八重と緋和には、柚の背後にぼんやりと眼帯をつけた洋装姿の色男が申し訳なさそうに立っていた。もちろん、柚は気がついて居ないし、見えても居ない。
八重も緋和も見えていて、柚の悩みの原因かつ解決方法がわかって居るだけに顕現は今はしていない近侍に心から助けを求めてしまう・

「「(そのうち理由がわかるようになるかもよ!!と言いたいけど確証はないからな……)」」

なんと言って良いものか、と二人が悩んで居ると、柚が黙りこくった二人を心配して話しかけた。

「やっぱり、変かな……?あ、あとねもう一つ変なことがあるんだけどね。ここ最近、夢で妙に具体的でリアルな夢を見るんだけど、リアルすぎてなんか怖いんだよね、私大丈夫かな??」

変なことを言って二人に嫌われないか、と不安そうに聞いてくる柚と対象的に、柚の言葉を聞いた八重と緋和はものすごい良い笑顔で柚の言葉を否定した。

「大丈夫!!!柚は変じゃないよ!!!」
「八重に同じく、柚は変じゃないよ!!大丈夫!!そのうちというか、近々で悩みは解決するから!!」

 八重と緋和の勢いに圧倒された柚は、無言で頷くしか出来なかった。

 それから数日後、柚の誕生日当日、朝起きると柚は今までに無いほど、はっきりと声が聞こえた。

「……え、あ、みつ…ただ、だったの?この声」

「ごめんね?主。不安にさせたかな……?」

 柚の呟きとともに、桜吹雪が舞い、その中から眼帯をつけた洋装姿の色男が申し訳なさそうな顔をしながらそう言った。柚が驚きのあまり、何も言えなくなっていると光忠はあっとなにかに気がついたあと、顔を逸らしながら柚に言った。

「ごめん、寝起きだったね。詳しい話は着替えてからしようか。」

 という光忠の言葉に柚は、脳内にかっよく決めたいよね!と光忠の決めセリフを思い出し、苦笑いしながら身支度を整え始めた。
相変わらず、オカンみたい、と思っている柚の思考を読んだかのように光忠が柚に声をかけた。

「僕は、君のお母さんじゃないって前も言ったよね??僕は紳士的に対応しただけだよ??そこのところ間違えないで欲しいな」
「あ、はい」

 身支度を済ませた柚が光忠に声をかけようと振り返ると、柚が着替えている間に準備していたのか、座布団が敷かれ簡易的にではあるが話し合いができるような場がつくられていた。いつの間に、と柚が驚いていると、座らないのというような顔を向けてきた光忠に気がつき慌てて席につく。
慌てて席に着いた柚だったが、顔を光忠に話を聞こうと顔を向けると、柚は光忠が驚いていることに気がついた。自分の今の行動になにか不手際があったのかと、光忠に問いかけようとしたとき、光忠が喜びを隠しきれない声で言った。

「急いで居るのに随分淑やかな所作だね。いいご両親なんだね」
「そう、なの?あんまり意識してないから……でも、光忠が言うのなら、そうなんだろうね」
「無意識下でそれだけ出来るのなら、ご両親の教えが良い証だよ。
 あ、話がそれちゃったね。どこから話すべきかな…そうだな、僕も詳しくわかってないのだけれど、前世の審神者の記憶を持つ者は7歳の誕生日で記憶を思いだすみたいだね。その際記憶と供に当時の近侍が顕現されるみたいだ。簡単に言うとこんな感じかな。」
「何故光忠はそんなに詳しいの?なんかまるで見聞きしたかのように、もしかしてあの二人も?」
「そう、あの二人も記憶をもっているよ。最も、君が僕の声が聞こえるようになったのも、あの二人がきっかけと言っても良いかな。
 おっと、もうそろそろ朝ご飯の時間かな。もっと詳しい話はあの二人に聞くといいよ。この後、遊びに来るんだろう?」

 簡単な事は知っているが、それ以上の事は話そうとしない光忠に少しばかり疑問を抱いた柚であったが、あの二人に聞くことがなにか意味があるのだろう。詳しく問い詰める事を諦め、素直に朝ご飯に向かうことにしたのだが、向かう前に光忠に柚は一つ頼み事をした。

「光忠、お願いしたい事があるのだけど良いかな?」
「ん?良いよ、僕に出来ることならば」
「私の記憶が戻った事をあの二人に伝える事ができるなら伝えて欲しいのだけれど、頼んでも良いかな?」
「何だそんなことかい、良いよ。伝えてきてあげるよ。二人も気にして居たしね」

 光忠の返答に感謝の意を示すと柚は食事をするために、自分の部屋を出て行った。


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