艦ネタまとめ
主人公:土佐(加賀型戦艦)
「貴女がここに来る前、長崎に行ったの。」
卓を挟んで向かい合った加賀は、何枚かの写真を見せた。大浦天主堂やグラバー園、中華街にまで行ったらしい。一人旅のようで、随分と食べ歩きもしたようだ。幾つか食べ物の写真も混ざっていた。
「懐かしい…クレーンは見に行かれました?もう100年以上も動いてるんです。」
かつての自分が作られた場所に思いを馳せて、そう尋ねる。懐かしい、異国情緒の漂う坂の街。流石にあれから90年も経ってしまったからかつての土佐が知る町並みではないけれど、それでも彼女の故郷であることに変わりはない。
姉が撮った写真を感慨深く眺めていると、恐る恐るといった風に、姉は一枚の写真を差し出した。
「端島にも行ってきたの。」
端島?あの炭鉱の島に何かあったのかしら、と土佐は首を傾げた。
「今は軍艦島って呼ばれてるのよ。」
渡された写真をまじまじと見る。やはりというべきか、土佐が知っている端島ではない。小さな島にコンクリートの建物がたくさん建っていて、なるほど、軍艦の艦橋に見えなくもない。
「土佐に似てるから、軍艦島。」
(なお主は長崎に行ったことはないです)
主人公:涼月(秋月型駆逐艦)
涼月の朝は忙しい。まずねぼすけな次姉と直近の妹を起こして身支度を手伝い、長姉がやたら質素な朝食を作ろうとするのを止め、また夢の世界へ飛び立とうとしている姉妹二人を起こす。どうにも秋月型には問題児―といえるほどではないのが厄介な面子がそろっていた。
「おはようございます!」
それが終わって姉妹を訓練に送り出せば次は涼月も出勤だ。水雷戦隊の一員として日々の鍛錬は欠かせない。
「おはよう涼月。今日も朝から大変だったみたいね。」
声をかけてきたのは旗艦の軽巡矢矧。彼女もなかなか手のかかる姉妹を持つため、2人の間には謎の親近感が生まれていた。その顔にも朝から苦笑が浮かんでいるのを見て、後で一緒に間宮に行こう、と涼月は決意した。
主人公:シャルンホルスト(シャルンホルスト級戦艦)※僕っ娘
鋼鉄の姿を持っていた頃から幸運を謳われていたシャルンホルストにとって、当たった魚雷が不発などというのは日常茶飯事だった。だから慢心していた―そんなつもりではないと言っても言い訳にしかならないが、その日もいつものように海原を駆け、落とし切れなかった爆撃機が急降下爆撃を仕掛けようとしたのを見て、シャルンホルストは躊躇うことなく彼女を、ビスマルクをその背に庇ったのだった。
「馬鹿だ馬鹿だとは思ってたけど、こんな馬鹿だとは思ってなかったわ…!」
結果として、そうそううまく強運が発動することはなく、シャルンホルストは敵艦爆の攻撃をもろに食らってしまったのだった。まだ中破しかしてないと強攻するシャルンホルストを半ばむりやり引き留め、鎮守府へ帰還させたのは、いまシャルンホルストが横たわるベッド上で泣き崩れるビスマルクだった。
「うん、ごめんね。」
「ごめんねで済むわけ無いでしょ!?私っ…私、シャルンホルストが沈んだらどうしようって、ずっと…ずっと泣いてたのよ!!」
「そうだね。」
ビスマルクの金髪を撫でる。どうやらシャルンホルストは帰還途中に気を失い、ビスマルクを始めとする同行していた艦娘たちに曳航されて鎮守府に戻ってきたらしい。そのまま入渠も済ませたようだが、結局つい先ほどまで意識は戻らなかった。
「大丈夫だよ、僕はビスマルクを置いて沈んだりしない。」
「沈むなんて言わないで。ずっと、ずっと私のそばにいてよ!!」
「君は…いや、そうだね。がんばるよ。」
君が、まさか僕を置いていった君が、そんな残酷なことを言うんだね。