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幻想の貴婦人

ニリツのデフォ名の由来は騎士ドン・キホーテが想像した貴婦人であるので。
もしも娘ちゃんが存在しない、ドフィの頭の中にしかいない存在だったら。

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新しく幹部になったものに、その注意事項は最初に告げられる。

ドフラミンゴが誰もいない空間に向かって喋っていても、それを茶化さないこと。否定しないこと。話を合わせること。

―そこには、彼の娘がいるという。

「お前はどう思う?」

話には聞いていたが、実際に見ると驚きを通り越して不気味だ。
ベラミーとドフラミンゴしかいない部屋で、唐突にベラミー以外の誰かに話しかけ始めたドフラミンゴ。なんでも、かつて裏切り者を処刑した頃から、ドフラミンゴは度々こうした白昼夢、あるいは妄想に取り憑かれるようになったらしい。

医者に見せる、と行っても本人が断固拒否し、こうやって一人で会話をし始めること以外は害がない、ということで古参幹部たちは静観を決め込んだらしい。害がない、とは言ってもなあ。

「ああ、そうか…。フフッ、やはりお前は頭がいい。」

『そうですか?お役に立てたなら何よりです。』

「ああ、さすがはおれの娘。」

一人で―あるいは二人で相談し、考えがまとまったのかドフラミンゴはメモに書き込む。時折、机の上を撫で擦るようにその手が動いた。

「よし、これでいい。おいベラミー。」

『本当に、彼でいいんですか?』

「いいだろう、もしもミスをしたら―消すだけだ。」

机の上に置かれた娘の手を握り込みながら、ドフラミンゴは笑い声を上げる。それを見たベラミーは、悪のカリスマと呼ばれる男のとんでもない深淵を覗き見てしまった、と生唾を飲み込んだ。

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後々現実に気づいて絶望してほしい。
あるいは実は行方不明になってたりした娘ちゃんと再会して号泣してほしい。

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