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趙子龍と劉備の娘

実際劉備には二人は娘がいて、劉備が荊州から逃げる際に曹純に捕まっている。その後どうなったのかは不明。まあこの時代の女性の扱いなんてこんなもんだろう。

なんやかんやで蜀に戻ってきた劉備殿の娘と趙雲の話。息をするように娘主を量産する。
いうて20歳ぐらい年の差がありそうだけど…。魏で隠れるようにして暮らしてて引っ込み思案引きこもりな娘と、そんな娘に一目惚れして百夜通いしちゃう趙雲。なんなら戦の褒章で娘ほしいって言ってもさすがに仁君はくれないか。いやでも仁君だからこそくれそうな気もする…。ううん、どうくっつけよう。

デフォ名は劉深、字は礼姫。劉礼姫ちゃんです。姫ってのは後宮における位の意味もあるらしいけど蔡文姫の例があるから大丈夫っしょ。ほんとは伯叔とか入れたかったけどセンスがなかった。

→お試し→

夜も深く、月が一層輝きを増す頃。誰かが戸の前に座した気配があった。
気配など、そういったものに疎くとも、何度も経験すれば流石に気づくようになる。手元に落としていた視線はそのままに、私は一つ溜息を吐く。

「また来たのですか。」

「は。」

私の問いかけに、影は平伏した。主君の娘とはいえ、つい最近まで敵国にいた女に対してよくもまあ、そこまで礼節が尽くせるものだと感心する。無論、皮肉だ。

「今宵で三十二夜目です。」

「飽きもせずよく来るものですね。」

「ええ。百夜通うと決めましたから。」

―真面目な男。謹厳実直。
趙将軍とはそういう人だと、幼い頃から聞いていたが。頑固の間違いではないだろうか、と最近思い始めている。
百夜通うと言い、実際に私の部屋まで来ても戸を開けることもなく、二言三言言葉を交わし、私が寝入っていれば証だけを置いて帰る。別に約束を果たしたところで、私がどうにかなるわけでもなければ、私をどうにかできるわけでもないというのに。

「公主様。」

毎夜毎夜、嬉しそうな声で私を呼ぶ。ときに手折った花を持ち、城下で買ったのだと瑪瑙の髪飾りを持ち。
風が吹けど雪が降れど、趙将軍はやって来た。彼が携えてくる贈り物は、いつの間にか白木の箱を埋め尽くした。

「公主様、今宵で九十九夜目です。」

趙将軍の来訪にも慣れ、気づけば百夜は目前に迫っていた。

「そうなのですか。」

「はい。」

趙将軍の声は心なしか弾んでいた。明日が来ても、何もないというのに。
そう信じていた私に、趙将軍は衝撃的な言葉を放った。

「明日も私が参りましたら、この戸を開けていただいてもよろしいですか?」





つづかないぞ

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