艦娘普通の人間説
一般の女の子の中から適性がある子が選ばれて訓練受けて艦娘になる説、好きです。
→→
真っ暗な海の上を必死で這う。
目は見えない、体もろくに動かない。
それでも、動かないと。帰らないと。
冷たい水が足を覆う。左手が、海面下に沈んだ。
「こんにちは、『涼月』さん。」
「こ、こんにちは、『秋月』さん。」
『秋月』さんはどうも苦手だ。どうやら私が適正のあった駆逐艦、涼月と関係の深いフネであるらしいけど、そもそも中の人とそりが合わないというか。
彼女はいわゆる優等生タイプ。クラスメイト全員の中心に立って引っ張っていくような。対して私は教室の端っこで一人で本を読んでいる地味なタイプ。相容れない関係。
「今日も演習、頑張りましょうね!」
「は、はい。」
きらきら輝く笑顔で見つめられて、思わず吃ってしまう。できる限り私に関わらないでほしい、なんて、姉妹艦という括りの中で言えるわけがないのだ。
姉妹たちの足手まといにならないよう必死で演習をこなした後、束の間の休息は図書室で過ごすようにしている。皆一様に艦娘という枠に当てはめられてはいるけれども、やはり元の人格が出るのだろう、図書館に来る人はどこか馴染みやすい空気を持っていた。
「こんにちは、涼月さん。」
「あ、こんにちは、大和さん。」
戦艦娘最強の誉れ高い大和さんもその一人。彼女とは、艦娘としての関わりが強いこともあるけれど、それ以上にこの図書館で頻繁に会うことから仲良くなった。本の好みも似通っていて、私と彼女は歴史書を好んで読んでいた。
「演習お疲れ様です。ちょっと見てたんですけど、涼月さん、とても動きが良くなっていましたね。」
「そうですか?そうだと…いいんですけれど。」
「確実に上達していましたよ。この大和が保証します。」
「あ、ありがとうございます…!」
大和さんの言葉に思わず私は頬を染めて、慌ててうつむく。大和さんは私を喜ばせるのが上手だ。