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フリップ芸で会話するタイプの海賊

某ペンギンに触発されて。


この度ハートの海賊団に加わったその男は、なんでも生来喋れないらしい。
それだけ聞くと、普通に喋ることができる俺達は、ああ不便そうだな、と上から目線の憐憫を抱くものだが。

『せんせー!シャチが一杯だけって言ってせんせーのお酒飲んでました』

「おまっおい告げ口とか汚えぞ!!」

手にしているのは比較的小さめのクロッキー帳。そこにキュッキュと音を立てながら文字を書き込み、会話する。なるほど口で会話できないからこそ編み出した技だ。だが、こいつはその技術を発展させすぎていた。

『許せシャチ…弱者は強者に従うのみ
この世はそう焼肉定食』

「それを言うなら弱肉強食だろ!?」

何せ会話にネタを仕込みまくっている。しかも当の本人は全く表情を変えないのが却って笑いを誘った。

「ほう…シャチ、いい度胸だな。」

「ああっキャプテン…!!」

『その後シャチの姿を見たものはいなかった…』

「おいコラ!ホラー小説みたいに終わらすんじゃねえ!」



『海賊は実力社会だから仕方ないと思います』

「お前海賊である自覚あったのか」

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