ニリツ転生パロ
ドフィが現代に転生したらやっぱ悪いことするんじゃないか説と普通に会社勤めなんじゃないか説がありますがここは会社員で。前の記憶喪失ネタに通じるものがある。
基本設定として今度は親子じゃない。ドフィが社会人6年目ぐらいで娘ちゃん高校生。
→ドフィは覚えてる
電車内になだれ込んできた人混みの中に、懐かしい姿を見出して、ドフラミンゴは息を止めた。ああ、なんて―狂おしいほどに愛おしい、俺の娘。
「えっ模試?土曜潰れる!」
「しかもマーク式だから長いやつですよ。残念ながら。」
友人とおぼしき短髪の少女と、満員に近い電車の中で顔を寄せて話し込んでいる。同い年の友人とはあんなふうに接するのか、と、かつては見られなかった娘の姿に少し動揺した。
「そいやさー、来週から文化祭準備じゃん?そっちは何すんの?」
「んー……何でしたっけ…」
「ちょ、覚えときなよ」
小突き合い、二人の少女が笑う。ドフラミンゴの知らない娘だった。生まれ直してあの性格を獲得したのか、あるいは以前から―。
「んじゃ、悲しいかな土曜もお会いしましょう。」
「はーい。」
閉まる扉の向こうへ、娘は友人に手を振っていた。
話し相手を失った娘は、扉の横に肩をもたれさせて単語帳を開く。一般的な女子高生の姿だった。
そしてふと、視線を紙面からあげた少女と、目が合った。凝視していたことに気づかれてはまずいと、慌てて視線をそらす。
『まもなく、天神前、天神前です。』
車内に俺の降りる駅がコールされる。降りしなに、もう一度娘を振り返った。
彼女は相変わらず、英単語を目で追っていた。
→娘は覚えてる
「えっ?」
ゴォッと、音を立てて特急列車がホームを通過する。
強い風に髪を舞わせながら、疲れ目だろうか、と少女は目を擦った。
違う。
向かいのホームに、父親がいた。
いや―正確には、前生の父親。
相変わらずの悪人面で、どう見てもあまりよろしくない自営業の人なのだが、なんということか彼は、少々くたびれたスーツに身を包み、黒のビジネスバッグを抱えていた。まさかまっとうに働いているのか。
かつてがかつてだっただけに、きちんとどこかに勤めている父親というのがとてつもなく不思議で、奇妙で、でもかっこよかった。
(…そうか、もう世界を憎んではいないんだ。)
考えれば当たり前のことだ。この至極平和な世界で、ドフラミンゴはかつてのような迫害にも合っていないし、狂気と憎悪に塗れる機会なんてないんだろう。
それは、とても幸せなことだった。