ベビちゃんのミサイルガールを構え撃ちさせたいだけ
「で、ここに地下室への入口を開く機構があるのでそれを作動させて…」
どこから入手したのか、敵対組織のアジトの図面(隠し部屋までちゃんと描かれている)を指し示しながらネアは作戦を説明する。そのあまりの緻密さに、説明を受けているベビー5とバッファローの頭上には『?』が大量に浮かんでいた。
「で、ここに対象がいるのでまあ、好きなように排除していただければ。」
それで今日の仕事は終わりです、というネアに、ベビー5は手を上げて質問をする。
「どうしました?」
「…もう一回説明してもらっていい?」
同意を示すバッファロー。その二人の様子を眺めて、ネアはしばし考え込む。
「…ええ、私が細かいことは全部やるので。二人はとりあえず眼前の敵を掃討していただければ。」
「そういうことなら簡単ね。」
「まかせろですやん」
「な、なんだ!?」
突如として全身を揺らした衝撃に、その男は愛刀を引き寄せて身構えた。
「随分かかっただすやん」
「遠回りしまくってますから。―ベビちゃん、お願いできますか。」
「了解!"武器変貌"!」
鋼鉄をまとうベビー5を前に、ネアは片膝を付き、もう片方は立て、立てた方の足元にアーミーブーツから引き出したアンカーを石の床に打ち込む。
残忍なペイントが施された弾頭に狙われた男は、思わず立ちすくむ。―逃げられるのか?これは。
「―逃げられるのなら逃げてみなさい。行きますよ!」
"ミサイルガール"
炸裂したミサイルの欠片がうねうねと蠢き、もとのベビー5に戻るさまをネアは不思議そうに眺めていた。―能力者って、どういう原理なんだろう。
「これで仕事は終わり?」
「終わりです。…ええ。」
ちゃんと男が隠し持っていた紙束まで燃やし尽くしたのを確認して、ネアはそう告げる。ここが地下室であることを考えると早く脱出したほうが良さそうだ。
「にしても、いつも思うんだけど私はネアと一緒に戦ったほうがいいと思うの。」
「どういうことだすやん…」
裏切り!?と声を上げるバッファローに、ベビー5は違うわ、と声をかける。
「別にバッファローでもいいんだけど、ネアのほうがなんていうの?相性?」
「やっぱり裏切りだすやん…」
いつになく暗い表情をするバッファローをフォローするように、ネアがいえ、と声を上げる。
「ベビちゃんはともかく、私が単騎でいたほうがいいんだと思います。」
「…たしかにネアは一人でも十分強いわよね。」
なるほどなるほど、パワーバランスね、とベビー5は頷いた。