企画 | ナノ

理性は熱暴走しました

きっと『いつも同じ気温湿度じゃつまらない』とか言ったお偉いさんの都合なのだろう、宇宙を飛び続けるアークスシップの中にも四季は存在する。しかし知る人によれば本物には程遠いらしく、せいぜい平均気温が上下したり湿度が少々変化するぐらいだ。だが人間とはそういう生き物なのか、やたらと季節感を大切にするものである。

さて、今年もこの季節がやってきた。

フランカさんのカフェにはいつもと違う、海辺のコテージがお目見え。それと同時期に惑星ウォパルへダーカー狩りに出るアークスの数がぐんと増える。つい先日まではハルコタンに行っていたであろうに。
そうやって訪問者が増えることも一因なのだろうか、この時期はウォパルに異常事態が発生しやすい。ダーカーのみならず、原生種が暴走したり、なども。

そして今日も、ウォパルでバカンスを過ごすアークス御用達のビーチにダーカーが発生したとの一報。調度手が空いていたこともあり、終わったら泳ぐかぐらいの軽い気持ちで、ゼノはウォパルに降り立ったのだった。




「よし、こんなもんか。」

周囲のエネミーを片付け、綺麗になった景色を前に一人頷く。遠くを見ればまだ凶暴化した原生種や、ダーカーといったエネミーがうごめいているが、ゼノのようにアークスシップから駆けつけたアークスや現地にいたアークスが相手をしているため、掃討されるのにそう時間はかからないだろう。
とはいえここで一人手持ち無沙汰に立ちすくんでいるのもなんだか気分が悪い。誰かを手伝いに行こう、と思いつき、調度視界の端に特徴的な弓でダーカーを射抜く、見慣れた姿を発見した。ドルシネアだ。

「よっ、ドルシネア……!?」

駆け寄って、気軽に声をかける。―そして、ドルシネアの見慣れぬ姿にゼノはしばし硬直した。

「あ、ゼノ先輩。」

一方のドルシネアは特に気にした素振りも見せず、出現したダガンを正確に射抜く。彼女愛用のアルテイリが弦を引いて音を立てた。

「おおおおお前、どうしたんだその格好…」

あまりの動揺を取り繕うことすら忘れる。それほどに、彼女は凄まじく破壊力のある姿をしていた。確かあれは最近女性アークスに大人気の水着、セクシービキニウェア。もう既に名前がアレだが、いくらなんでも露出が多すぎないだろうか?

「これですか?これはジェネさんに選んでいただいたんです。なんでも肌を多く出したほうがフォトンの吸収率がいいそうで。」

「いや…多分それは迷信だと思うぞ…。」

それに元々強いアークスであるドルシネアがフォトンの吸収量を多くしたところでどうするのか。
せめて一枚上に羽織ってほしいなあ、などと魅力的な姿に頭を抱えつつ、ゼノは得物を振るう。と、何か重いものが降り立つ音がして、振り向けばダーク・ビブラスがこちらを向いていた。

「ビブラス…随分大きいものが出てきましたね。」

同じように振り向き、相手を見定めたのだろう、ドルシネアが弓を構える。

「こいつぁやべえな。よし、行くぞ!」

「はい!」

ゼノもナナキを握り直し、一気に距離を詰める。上位アークス二人に同時遭遇したこのビブラスは、なんて運が悪いのだろうか。




「ふう、お疲れ様でした。」

「ああ、おつかれさん。」

大物を倒し終え、二人して互いの努力をねぎらう。周囲を見れば既にエネミーの姿はなく、バカンスに来ていた人々も戻っていた。

「あー、もしかしてドルシネアもバカンスを?」

「ええ、休暇中のフィリアさんに誘われまして。」

「なるほどなぁ…。」

だから水着で戦っていたのか、と納得する。正直激しく動いては水着が大変なことになるのではと戦闘中は気が気でなかったのだが、そこはアークス御用達、さすがの耐久性と言う他ない。

「だからそんな格好で。」

「はい。似合いますか?」

「似合っ……ああ、そうだな。俺は似合ってると思うぞ?」

ゼノがそう答えると、ほんとですか、とドルシネアが嬉しそうに微笑む。
―可愛い、可愛いが、その格好いろいろ危ないと思うぞ!?

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