長編 | ナノ

3

愉快な空中遊泳の途中、ナミの電伝虫に通信が入った。どうやら別行動中の麦わらの一味クルーが、人魚がオークションにかけられたという情報を入手したらしい。

ならば私はお役御免ですね、とそれとなく離れようとしてみたが、ナミに腕をがっしりと掴まれる。

「捕まえた人間たちがいる場所、分かる?」

どうやら当分離してくれないらしい。



彼女たちが1番グローブに到着すると、手配書越しに見た顔がちらほらとあった。
彼らは初対面のネアにも好意的に接し、彼女が案内のために半ば拉致されたようなものだと察すると、ナミの気の強さを知っているだけに同情の言葉をかけた。

「ネアはオークションに行ったことあるのか?」

綿あめ大好きトニートニー・チョッパーに尋ねられ、曖昧に頷く。父親に連れられたからとはいえ、あまり肯定したくない事実だ。

「職業柄、見に行ったことはあります。」

「てことはネアちゃんも海賊なのか?」

今度は黒足のサンジだ。人身売買から海賊を連想するとは、随分と優しいことだ。
しかし、海賊か、とは。

「海賊…でしょうね。おそらくは」

政府公認の海賊にして一国の王の娘という宙ぶらりんの立場であるが、広義の海賊には入るだろう。おそらく。

「ねえ、搬入口はどこ?」

「裏手です。見張りがいるはずですが…」

まず商品になった時点で連れ戻すことは難しいですよ、と告げる前に、ナミは走り去っていた。随分と行動力のある人だ。

「よし、俺達も行こう」

サンジに促され、その後ろを付いていく。本来すべきことを全て放棄していることに罪悪感を覚えるが、このルーキーの一味が何をしでかすのかだんだん楽しみになってきた。父親に怒られそうだが。



裏口が見える位置まで行くと、またしてもナミの怒号が聞こえ、既視感を覚える。
どうやら人身売買の違法性について主張しているようだが、ここのオーナーが誰で、どんな方便を使っているか知っているため、大変居心地が悪い。
なにせ、ここは政府公認の海賊が"関与しただけ"の職業安定所である。しかも顧客に天竜人がいるからたちが悪い。いや、オーナーも天竜人…これ以上考えるのはよそう。

やがて言い争いはオークションに参加する方向でまとまったようで、全員の足が入り口に向く。そんななか、おもむろにナミが近づいてきた。

「ねえネア、手続きの方法分かる?」

この人は私が分かっているということを知りつつ聞いているのではないだろうか。

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