長編 | ナノ

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話を聞くところによると、どうやら彼女たち―予想通り"麦わらの一味"の"泥棒猫ナミ"と"悪魔の子ニコ・ロビン"だった―は、人魚が欲しくて探しているのではなく、友人の人魚を探しているらしい。

「話は分かりました。なぜ人魚から目を離してしまったのかはこの際置いておきますが。」

そもそも大切な友人であるなら何故人攫いが多く現れる遊園地へ連れて行ったのかと、原因から糾弾したい気持ちを抑えつつ、彼女たちの質問に答える。

「1番グローブで開かれるオークションでは奴隷の取引が盛んです。まして人魚であれば希少性が高く、欲しがる人も多いでしょうからそこらの人間屋に売るよりオークションに出したほうが高値が付きます。」

「なるほどね。なら、人間屋を当たるよりオークション会場に行ったほうがいいかしら?」

悪魔の子、という通り名を持つ黒髪の妙齢の美女に尋ねられ、首を縦に振る。余程の変わり者でない限り、人魚はオークションに掛けるのが普通だ。

「で、そのオークション会場はどこにあるの?」

どこ、と言われても。地図を書くべきかと手帳をかばんから引っ張り出したところで、泥棒猫待ったをかけられる。

「道案内してくれない?私達、この島のことよく知らないの。」

にっこりと、素敵な笑顔である。だがその中には否定の言葉は受け付けないという堅い意志が感じられた。
ああ、困ったことになってしまった。
心の中で謝罪する。お父様、ごめんなさい。

「あなた、名前は?」

「ネアです…」

手を引かれ、トビウオの上に乗る。前の座席に座ったナミさんが、1番グローブを指示するのを聞いた。

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