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古来より、2つの勢力が相対し、その勝敗が決まってから起きることなど決まっている。
虐殺と略奪だ。
しいて言えば今ここで勝利を手にしたのは海軍であるので略奪は行われていないが、追撃という名の虐殺は現在進行形である。しかも先陣を切っているのがあの海賊嫌いの赤犬。この分では、マリンフォードにいる海賊は一人残らず焼き尽くされるかもしれない。但し七武海は除く。
そんな状況を見るに見かねたのか、海軍の制服に身を包んだ若い少年が赤犬の前に飛び出した。ああ、死んだな。
「おや、ドルシネアじゃないか。父親はどうしたんだい。」
声をかけられて振り返れば、大参謀と称される老婆がいた。どうやら彼女も少し前線を見に来たらしい。
「お父様なら用があるとかで別行動ですが…?」
彼女にそう返答すると、つるは用?と眉をひそめた。
「用ってなんだい?」
「そこまでは私も聞いていません。」
一方のネアもおや、と疑念を抱く。父親の用は海軍から命じられたものではないのか。ということは個人的な…?
いや、だが父親はPX-0を気にかけていたが、ここまで関わったところは見ていない。今遂行しているその"用"にPX-0が用いられているのではないか?そうだとすれば父親に命令を下したのは―いや、そもそもあのプライドの高い父親に命令を下せるのは―。
命令者と、その内容は何なのか。ネアが頭を悩ませている間、戦争は別局面へと傾いていた。
漣のようにざわめきが伝わる。あるいは糸を伝わる振動のように。そしてそれは確実に彼女たちに情報をもたらした。
「赤髪だ…!」
「なぜここに赤髪が…!?」
四皇、赤髪のシャンクス。
まさかここに来たのか。ここに?
今度は海の方へと視線を移す。死屍累々。その惨禍の中にひときわ目を引く赤い髪。
そして、彼の言葉はこの戦争に幕を下ろした。
少々の戦果のために、双方が数多の犠牲を支払った戦争の。
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