長編 | ナノ

22

処刑台の上にあるはずのない炎が現れた時、ネアは敗北を覚悟した。それと同時に計画が実行に移されるかもしれないという覚悟も。もしも海軍が決定的に敗北したならば、人心が離れ弱体化した海軍、及び政府を、父親は今度こそ潰しにかかるかもしれない。そうなったら、今度こそネアは本気で戦わざるを得ない。そのための力を持って、ネアは産み落とされたのだから。

だが、海軍もそう安々と負ける訳にはいかない。熾烈な追撃は、ついに火拳のエースを捉え、その命を奪うことに成功した。

麦わらが、呆然と座り込んでいた。

「なんだ、終わったのか。」

声の聞こえた方に視線をやれば、至極愉快そうな表情の父親。あれ、クロコダイルはどうしたのだろうか。いや、それよりも。

「お父様、おっしゃっていた"用"とやらは済んだのですか?」

「あァ?そうだな…もうちょっとしたら行く。」

父親は周囲を眺めてからそう言う。まただ。また、父親は何かを探している。

「もう少し、戦争は続きそうだからな?」

すでに火拳は死んだというのに、まだ続くのか?
まるで根拠があるように父親は嘯く。そしてその言葉通りというべきか、湾内に新たな姿が現れた。

「あれは…黒ひげ?」

黒ひげ、マーシャル・D・ティーチ。ああ、そういえばこいつも『D』か。にしても、七武海であるくせにこれまで参戦していなかったやつが何の用だ?漁夫の利でも狙っているのか?

黒ひげと白ひげ、対極の存在が相対する。

「もう一人死人が増えそうじゃねえか。」

父親は実に楽しそうだ。
確かに、すでに戦傷の多い白ひげと、ついさっき到着したばかりの黒ひげではどちらが有利かなど目に見えている。しかも、黒ひげは何やら面妖な技を使っていた。どうやら能力を無効化しているらしい。確実に、白ひげの命は削られていく。

「さてと、俺は少し離れる。」

どうやら、父親が言っていた"用"を遂行する気になったらしい。首を巡らせて、何かの位置を把握している。

「私は何をしていれば?」

「言っただろ?敵は全て倒せ。ああ、お前が敵だと思ったなら、海兵も切ってもいいぞ?」

海兵も、の発言に、ネアは驚いて父親を振り返る。

「な、え、何を?」

動揺し尽くしている娘の姿に、ドフラミンゴは笑った。

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