長編 | ナノ

21

てっきり物量で押しつぶすのかと思えば、知略と力で押しつぶすつもりらしい。防護壁で囲まれた湾内、それも足場は氷製という立地に大将赤犬のマグマが降り注ぐ。敵を包囲して殲滅、素晴らしい手際である。オーズの体に阻まれて包囲が不完全ではあるが、それでもセンゴクの策は、敵戦力の削減という点においては成功したと言っていいだろう。センゴク自身も手応えを感じているのか、エースの処刑執行を指示した。そうだ。彼の処刑執行がなされるかどうかがこの戦争の勝敗を握っているのだ。

執行人二人が刀を振り上げる。エースは自然系の能力者だが、海楼石で拘束されてはただの人間に等しい。戦争の終結が、もうそこまで見えていた。

そう、見えていた。見えていただけだ。

細いつむじ風のようなものが、正確に執行人二人を吹き飛ばした。

「やはり先ほどのうちに仕留めておくべきでした…」

サー・クロコダイル。彼はいったいどちら側なのだ。白ひげか、海軍か。私やお父様と争ったのだから白ひげ側?いやでも白ひげとは対立している…それよりも、彼はどうやって処刑台の真正面、それも海兵たちの中心に行くことができたんだろうか?
まさかの出来事に困惑しつつ、クロコダイルの動向を見つめる。途端、クロコダイルの首が飛んだ。そして自分の傍にいた気配が動き出す。まさか。

「テメエ、俺を振って白ひげと組むのか?」

やはりお父様だった。しかし、覇気を纏わせれば簡単に首を落とせるのにそうしなかったあたり、相当クロコダイルを買っているらしい。確かに所業や地位に共通点は多いけれど、そんなに入れ込むほどのものだろうか?

「俺は誰とも組みはしねェよ」

お父様が振り上げた足と、クロコダイルの左手の鉤爪がぶつかる。今度はお父様直々に相手をするらしい。いよいよお役御免となったので、少し距離をとって父親とクロコダイルの一線を見守ることにした。幸いにも周囲は海兵だらけであるので、ネアが実力を振るう必要はない。遠くに、走る麦わらの姿が見えた。

そういえば、戦争が始まる前にお父様が言っていた"用"とは何だったのだろうか。もう済んだのだろうか?

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