LoveTrain 2/14 | ナノ
Love Train 2/14


*あふれるほどの甘さをちょうだい*


::倉持くんの場合

秋大の後から、自分で言うのもなんだけど、けっこうもてるようになってきた。野球しているところがかっこいいなんて、まるで足が速くてかっこいいって理由だった小学校以来のもて方だ。
今日もバレンタインで義理も含めてたぶん過去最高数だ。今もトイレに立ったら廊下で二つもらった。それをポケットに忍ばせて自分の席に戻る。この二つは本命とかっていうよりも「ファンです」的な一年生からだ。そのくらい軽いものだから、こちらも気兼ねなく喜べる。
ポケットから可愛い包みを取り出して、鞄へと放り込むオレを見て、へーって顔してる隣の席の女子。そういえば、まだ隣の席のコイツからもらっていない。女子の中で一番仲良くしているつもりだ。気も合うし、てっきり義理くらいあっさりとくれるかと思っていただけに拍子抜けだ。
「またもらったんだ」
「まぁな」
ポケットに手をつっこんだまま座って、自慢気な顔をわざとらしくしてみせる。
「お前はねぇのかよ」
「ないよー」
軽く笑われた。思っていたよりも心の中で落胆した自分に気づく。あれ、これってオレ…。もらえることを期待してたわけではなく、もらいたいと思っていたのだと気づいた。
「こんなお祭り騒ぎで伝えたくないもん」
机にうつぶせるようにしながらつぶやいた彼女の言葉と、自覚した気持ちが重なり合って、血が逆流したかと思った。彼女の机の脚を軽く蹴っ飛ばして、オレに注意を向けさせる。びっくりした目にこっちの方がびっくりしてんだよと言いたくなるのを抑えた。
「明日まで、待て。今日はお祭りだからよ」
明日、オレからちゃんと言わせろ。意味が通じたのか、彼女はさらに顔を自分の腕にうずめた。その耳とうなじが赤いことを目にとめて、オレは存分に満足した。早くバレンタインなんて日は終わっちまえばいい。



::小湊(兄)くんの場合

目の前に差し出された可愛い包みの意味とそれを持つ手の震えにオレはわずかにほくそ笑んだ。
「あのさ、わかってんの。コレの意味」
一応確認しておく。彼女は下を向いて、めいいっぱいといった感じで包みをオレに差し出したまま、うんうんうんと三回も頷いた。
「オレのこと好きってことでいいんだよね」
わかっているけど、義理じゃないことを念押しするように聞く。するともう一度うんうんと頷く。さっきより頷く回数が一回減ってるじゃん。なんでそこ、減るかな。
「オレと付き合うとね、いじられまくるけど、いいんだよね」
好きだから、すでにもうかまっていじりまくってたけど。だって、可愛いんだから、しょうがない。これで自分の彼女になったら、抑えがきかないかもしれない。彼女はそれをわってるんだろうか。わかってなくてももう後戻りはさせないけど。
差し出された包みを受け取る。自分の手から重みがなくなったことに気づいて彼女は目をあげた。その目はうるんでいて、それがまたたまらない。
「他の子にはしない…よね」
「…今までだって、他の女子をかまってたことなんてないんだけど」
オレの言葉に彼女はこれ以上どうやって赤くしたんだというくらい、さらに顔を赤くした。
「そういう顔、他の男にしたらお仕置きだからね」
彼女の前髪を少しつまんでツンっとひっぱる。これからどれほど可愛がってやろうかと考えるだけで笑みが浮かんだ。
多少は容赦してあげるつもりだけど、それでもやっぱり覚悟はしてもらわないと。



::伊佐敷くんの場合

オレの机の上の大きな袋には次々とチョコが放り込まれて、みるみるうちにいっぱいになった。
「じゃあ、結城くんによろしくね」
入れた女子たち全員のセリフだ。全員の、だ。哲がチョコを受け取らないせいで、オレが使われることになるのだ。この中には一つとしてオレ宛てはない。
「すごいね」
「全部、哲んだ、文句あっか」
密かにオレが惚れてる女子が笑いながら近寄ってきた。ふてくされるオレを後目にたくさんのチョコに目をやっている。
「あ、ここの高いんだよー」
「まじか」
「めちゃくちゃ。結城くんに味わかるのかな」
「さぁな」
そういうのを哲に要求するのは無駄だろうけどな。ふと、彼女の手にも同じ包みがあることに気付いた。なるほど、だから値段を知ってるわけだ。
「って、おまえもかよ」
あー、くそっ。オレの片思いもここまでか。けっこう上手くやってたと思ったのにな。けっきょく哲には何一つ勝てることなどないのかと思うと、バレンタインにもらえない以上に空しさというか悲しさというか、そういうのを通り越して笑えてくる。
「え、あ、これっ」
「ほら、入れとけよ。言っとくけど贔屓しねぇからな。みんな一緒に渡すからよ」
慌てる様子の彼女に口惜しさを押し殺して畳みかけるように言って、袋をあごでしゃくる。彼女はなぜかむっとした顔をすると、ぐしゃりと持っていたチョコを握りつぶした。
「え、おい、何して…」
何してるんだと聞く前にオレの顔にチョコの包みが押し付けられた。痛い以上に驚きが先にきた。
「犬ってチョコ食べちゃダメだったっけ。用意して損した」
捨て台詞のようにそう言うとフンと鼻を鳴らして教室を足早に出ていった。
全ての理由はこじつけなくても、そういうことなんだと気がついて、潰されたチョコの箱を持ってヒリヒリする鼻をさすりながら彼女の後を追う。
可愛げがない以上にかわいすぎる彼女にまずは何て言おうか考えながら。つーか、犬ってチョコ食えねぇのか。もったいねぇな。



::結城くんの場合

結局、今日はチョコレートを一切受け取らなかった。他校に彼女がいるのに受け取るのは彼女にもくれる子にも悪いと思ったからだ。なのに、今オレの手にはたくさんのチョコレートが入った大きな袋がある。すべて純からだ。もちろん純が女子からオレ宛てに預かったもので、純の気持ちではない。
家の近くの公園で下校途中に彼女と待ち合わせをしている。その公園で彼女を待ちながら、このチョコレートをどうするべきか思案にくれていた。
「ごめんね、待たせて」
駆け寄ってくる彼女に、いいやと首をふる。引退前はオレの方ばかりが彼女を待たせていたのだ。これくらいどうってことはない。
「…すごいね、それ」
やはり気になったらしい。チョコレートがたくさん入った袋を見て彼女は複雑な表情をしてみせた。
「純からだ」
「え、純くんって、あのひげの…」
「そうだ。全部純からだ」
「そうなんだ」
無理があるオレの言い分に、彼女はそれだけですべてを見通したのか、純くんには苦労かけてるねと笑った。
「はい、これ」
そう言って彼女はチョコレートを取り出してオレに渡してくれた。そう、これだけを受け取るために今日がある。
チョコレートを受け取って、幸せをかみしめる。すると彼女がもう一つ出してきた。オレが受け取ったものよりは小さいものだ。
「これ、純くんに」
「なぜだ」
「いろいろお世話になってるから…」
オレは彼女からしか受け取っていないのに、彼女が諸々の礼とはいえ、純にあげることには抵抗がある。
「だめだ」
思わず少し強めの口調になったせいか彼女は驚いたようで目を見開いた。
「他のヤツに渡す必要は一切ない」
してほしくない。義理、でも。オレの気持ちがわったのか、彼女は表情をゆるめた。
「うん、わかった」
彼女はその包みを開けると、自分の口に放り込んだ。
「美味しいんだよ、これ」
そう言って、もう一つオレの口元へともってくる。食べさせようとしているらしく、流石にとまどった。
「これ食べたら、それ許してあげる」
と、たくさんのチョコレートが入った袋をチラリと見た。なるほど、交換条件だな。しかし、この交換条件はオレにばかり有利な気がしてならない。彼女の目を見たまま、その手を掴んでゆっくりと口をチョコレートを持つ彼女の指に近づける。ほら、言いだした彼女の方が照れて真っ赤になっているじゃないか。



::増子くんの場合

沈痛な面持ちの彼女を目にして、その理由にオレ自身もショックを受けていた。
「う…がぁ」
「ごめんね。だって、貴子ちゃんが甘やかしちゃだめって」
バレンタインの今日、彼女からおいしいチョコ味のプリンがもらえるとばかり思っていただけにショックが大きかった。昨日から、いや、もうずいぶん前から楽しみにしていたのに。
確かに引退して太った。けれどそれはプリンのせいでも彼女のせいでもなくて、炭水化物のせいなのだ。だからバレンタインに彼女からチョコ味のプリンをもらうことは何も問題ないはず…だと思っておきたかったのに。
「私もあげたいんだよ、あげたいんだけどね。増子くんのこと考えるならダメだって。心を鬼にしてって言われて…」
しゅんとする彼女は用意してきてくれていたらしいプリンを取り出すと、おもむろに自分で一口食べはじめた。
それを見てオレの胃袋はかなり大きく主張する。が、彼女はオレに目もくれずにプリンを一心不乱に食べている。美味しいものを食べている顔じゃない。オレの目の前でそれを食べることの後ろめたさみたいなものが顔に出ている。それはまるで苦しい修行のようだ。そこまでして、どうしてオレの目の前で食べるのだろう。
食べ終わると、オレの顔を見た。そして、オレの顔に顔を近づけてくる。近づいてくる彼女の顔は、いつみてもかわいいもので、見惚れていると、ふわっと唇に柔らかくて甘いチョコの匂いのものが触れる。
「…これで我慢してね」
「! うっ、うがっ!」
突然のバレンタインの贈り物にオレの顔は湯気が出たのではないかと思うほど真っ赤になってしまった。そんなオレを見て、彼女も顔を赤くして、梅干しみたいと笑った。
梅干しっていうのは…丸いからか。やっぱり卒業までにはダイエットしようと心に誓う。いや、でもダイエットしたら今みたいなことはしてもらえなくなるんじゃないのか。それはもったいない。これはなかなか…難しい問題だ。



::御幸くんの場合

「えっ、ないの?」
「うん」
彼女はあっさりと頷いた。いやいやいや、今日はバレンタインで、オレと付き合ってるよな? 彼女だよな? 普通何かくれるもんじゃねぇの。
オレは顔に不満が出るのも隠さないで、口をとがらす。
「だって甘いもの好きじゃないでしょ」
まぁ。
「たくさんチョコもらう…もらってるし」
はい。すでに鞄はパンパンですが。
「じゃあ、いらないでしょ」
「いや、それは違うだろ」
そう、違うだろ。あぁ、それともあれだ! チョコとかじゃないものくれるわけだ。例えば私…とか。
「エロ眼鏡」
あれ、考えたことなんでわかったかな。
「顔に全部出てる。キャッチャーとしてどうなの。それ」
「いや、それはまぁ、おまえ相手に隠したってしょうがねぇじゃん」
そう言うと彼女は少し頬を赤らめた。かわいくてその頬を手のひらで包み込む。このままキスしてぇなぁ。ここが休み時間中の教室なんていう雰囲気のかけらもない場所じゃなかったら、とっくに抱きしめてキスしてるのに。
「でね、いいもの持ってきた」
と、オレの色づいた空気をあっさりと彼女はぬぐい捨てる。この雰囲気クラッシャーめ。でもそういうところが面白くて惚れちゃってるオレもオレだけど。
「いいものって何」
じゃーんなんて効果音までつけて彼女が出してきたものは…。
「湿布…?」
「そう、またわき腹痛めたら大変だからね」
まぁ、慢性にならないように気をつけてはいるけれど。でもこれって考えようによっては、とてつもなくいやらしくねぇか?まぁ、どうせわかってねぇんだろうな。オレの邪な考えをよそに彼女はにこにこしている。
「アリガトウゴザイマス」
「何か、心こもってない!」
ちょうどチャイムが鳴って、クラス中がざわざわと動き出す。そのざわついた空気をぬうように、不満気に口をとがらせた彼女のくちびるにかすめるようにキスをした。
「ありがとうございます」
「…こもりすぎ!」
そう言って離れ際にオレの腹を叩いていく。おいおいおい、オレの体気遣っててくれたんじゃないのかよー。



::降谷くんの場合

教室の雰囲気がいつもと違うなと思った。どうしてかなと少し考えていると、僕の思ったことに気付いたのか、はるっちが笑った。
「今日、バレンタインだからね。降谷くんたくさんもらうんだろうね」
そうか、バレンタインか。だからなんだか甘い匂いがしたんだ。
たくさんもらうんだろうねというはるっちの言葉の意味がわからない。
僕がもらうとこなんて想像つかないな。そこまで考えて、ふっと一人だけ顔が浮かんだ。顔が浮かんだら、体が勝手にその子のところへと近寄ってしまった。
「ねぇ」
彼女は友達と楽しそうに話していたけれど、気にせずにその袖をひっぱった。彼女はびっくりしたように僕を見る。そういえば僕から話しかけることあんまりなかったな。
いつも彼女が僕の世話をしてくれていたから。はるっちは優しくて親切だけど、時折あっさりと僕を見捨てることがある。けれどそんな時も彼女だけは僕を気にかけてくれていた。入学式の日からずっと。それはいつもやわらかくて心地がよくて、身も心もゆだねてしまいたくなる優しさだった。だから僕は彼女が好きだ。そう、好きなんだ。だから。
「チョコ、ちょうだい」
そう言うと彼女は顔を真っ赤にしてしまった。
「え、な、なんで」
「だって、バレンタインって自分の好きな子からチョコもらう日だから」
僕の言葉に彼女はさらに顔を赤くした。あれ、好きな子からもらう日だよね。違ったかな。確認するように付いてきていたはるっちを見る。
「まぁ、そういう解釈もいいんじゃないかな」
はるっちは笑顔だ。はるっちのそういう笑顔の意味はわかってる。そうか、間違ってたんだ。でもいいかな。だって彼女はあわてて自分の席へと戻って、鞄の中からチョコレートらしい包を持ってきてくれたから。僕の望みは叶ったみたいだ。



::小湊(弟)くんの場合

「あの、これ」
そう言って差し出されたのは間違いなくバレンタインのプレゼントだ。実は少し期待してた。クラスでも仲良くしている子だし、もしかしたらって。だから義理でもすごくうれしい。
「ありがとう」
プレゼントを受け取ろうとして、彼女の指の絆創膏に気がついた。昨日はそんなケガなんてしてなかったはずだけど。
彼女は僕の視線に気づいたのか、ぱっと手を自分の体の後ろに隠してしまった。僕がまだちゃんと受け取っていなかったから、プレゼントが宙にうく。
「っと」
ギリギリ床に落ちてしまう前にキャッチすることができた。よかった。せっかくのプレゼントだから落とさずにすんで。
「ごめんね、落とすとこだった」
「ううん、私こそごめんなさい、急に離して…」
顔を赤くして少し泣きそうに見える。その表情の意味を考えて、心が浮き立ちそうになる。
「あのさ、これは…」
義理だよねと念押しして聞くのって変かな。最初は間違いなく義理だと思ってたんだけど、今の彼女の顔を見ていると期待する気持ちが大きくなってくる。それに指の絆創膏。
「もしかして、手作り?」
僕の問いかけに彼女の顔は一瞬で真っ赤になって、つられるように僕の顔も赤くなったのがわかった。
「包丁でチョコ削ってて…慣れてないから」
「ありがとう、すごく…うれしい」
大切に両手でプレゼントを持つ。この手には彼女の気持ちも乗っている。そう思うと殊更大切にしたい気持ちがわいてくる。うれしくてたまらない。
「不器用だから、あんまり、上手くできなくて…」
「大丈夫。手作りしてくれたことがうれしいから」
そして、一瞬でも落としそうになったことを思い出す。
「中、大丈夫だったかな…せっかくなのにね」
「ううん。その方が上手にできなかったのがわからなくていいかも」
はにかむようにそう笑う彼女がとってもかわいくて、思わず手に力が入ってしまう。ばこっという箱がつぶれる鈍い音に我に返って、慌てて力を抜く。彼女と目があって、同じタイミングで僕たちは顔をほころばせた。



::金丸くんの場合

バレンタインだからと沢村の周りには義理チョコを持った女子が集まってきている。すでに義理じゃなくて女子にとって沢村へのチョコは友チョコと同等らしい。
幼馴染のかわいい彼女がいて、クラスの女子とも仲良くしてってどんだけリア充なんだよ。バカ村のくせに。
どうせオレは義理ももらえねぇよ。
「金丸、チョコもらったか?」
バカ村はにこにこと満面の笑みでチョコをオレに見せる。オレはむっとしてただ首を横にふった。するとバカ村はえって顔をする。
「みんなにくれてんのに」
その視線の先には吉川がいて、吉川とその友達がみんなに渡している。いくらみんなに渡しているからって自分からもらいにいくのはためらわれる。何より吉川の友達に気があるからなおさらだ。そんなことを知らないバカ村はほらほらとオレを引っ張っていく。
「あ、金丸くん」
吉川がオレに気づくと気恥ずかしくて思わず舌打ちしてしまう。
「金丸にやってくれ」
沢村の余計なひと言に、吉川は手にしていたチョコをなぜか友達に渡した。彼女はうつむいたままチョコをオレに差し出した。
何だ? 吉川はオレに渡したくないのか。チョコを渡してくれた彼女もオレの顔を見やしないし、何だかかえって空しくなってくる。と、その時。
「よかったな、金丸に渡せて!」
バカ村が大きな声でそういうと彼女の背中をバンバンと叩く。彼女は焦ってバカ村の口をさえぎろうとしている。吉川も
「そうだよ、この子が金丸くんのこと好きって内緒だったのに、沢村くんったら!」
なんて言っている。彼女はキャーっと真っ赤になって今度は吉川に抱きつくように口をふさぎに行く。
天然二人のその様子に一番当事者であるはずのオレが他人事のように、つい彼女に深く同情してしまう。
うん、まぁ、でも。
たまにはバカ村もいい仕事するってことだな。
オレは吉川に抱きついている彼女の肩を叩いた。彼女が恐る恐る振り返ると、ニヤニヤしそうになる顔をぐっとこらえて、サンキュと一言だけ口にした。
真っ赤な顔の彼女にドキっとして、オレも今日からリア充の仲間入りだと確信した。



::クリスくんの場合

オレがチョコレートが好きだということは、なぜか広く知れ渡っていて、今日もたくさんの義理チョコをもらった。
「え、と。クリスくん、ポッキーどう?」
彼女がポッキーを差し出してくれる。ありがとうと一本もらう。その前の休み時間にはトッポを持ってきていたし、朝一にはガルボだった。はたしてこれどういうことなのか。考えるまでもないだろう。きっとオレの彼女は今日がバレンタインだということに登校してから、気づいたのだろう。おやつはいつもたくさん持ってきているし、それもオレが好きなチョコ系が多い。ガルボもトッポもポッキーも。いつもと同じラインナップだ。バレンタイン用に用意をしてこなかったことを何とかごまかそうとしているのだろう。はたしてどこまで知らないふりをするべきか。判断に迷うところだ。
「いっぱい、もらってるね」
「義理だ」
そういうことを気にするタイプではないと思っていたので、彼女の言葉は意外だった。
「…私があげなくても大丈夫、だよね」
思わず、ため息が出た。
確かにチョコレートは好きだ。もらえるにこしたことはないとも思っている。けれどやっぱりバレンタインという性質上、大事なことは他にある。
「いくつもらうかとか、チョコが好きだとか、そういうことよりも、誰にもらうかが一番大事なんだ」
彼女に用意していないのが悪いことだなんていう誤解を与えないようにゆっくりと伝える。
「だから、これでも十分なんだ」
そう言って、もらったポッキーを掲げる。
「チョコよりもこっちの方が好きだからな」
そのままポッキーを彼女の口へと持っていく。呆けている彼女のくちびるをポッキーで何回かつつくと、顔を真っ赤にさせてぱくりと勢いよく食いついてきた。
「ポッキーゲームってあったな」
薄く笑ってそういうと、彼女はオレの手からポッキーを奪うと一気に食べてしまった。言わずにすればよかったな。

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