夢 | ナノ

太陽のジェラシー 0話

 二段ベッドが二つに勉強机が四つ。狭くて殺風景な、それが今日からオレの部屋になる。ベッドは下の方が楽だよという忠告を無視して、オレは上を使うことにした。今日持ってきた鞄から古いタオル地の筒型の枕カバーを取り出して、枕につける。サイズがちょっと合わないけど、無理やり枕カバーに押し込んだ。

 この枕カバーは元々、おくるみという、大きなタオル地の風呂敷みたいなやつだったらしい。赤ちゃんのころオレはこれに包まれてたのだそうだ。それを幼稚園の時のお泊り保育でおくるみがないと寝られないオレを心配した母ちゃんが枕カバーに作り替えたらしい。その後も枕カバーという言い訳の軽い存在は、リトルやシニアでの遠征や合宿でも持っていけた。おかげで高校生になる今も当たり前のように持ってきてしまった。さすがに今はもうこれがないと眠れないなんてことないんだけど。それでも手放したくないのは、心地よい匂いがするからだ。

 その心地よさは、幼馴染の葉子にそのまま結びつく。

 葉子は隣の家の三女だ。葉子の姉ちゃんたちはオレの姉ちゃんたちと全く同じ年で仲がいい。親も仲がいいし、小さいころから何かと一緒に過ごしてきた。というか、生まれた時期もほぼ変わらないから、おくるみにすら一緒に包まれていたくらいだ。

 幼稚園も小学校も中学校も一緒だった。高校になって、初めて離れることになった。それはオレにとってもたぶん葉子にとっても青天の霹靂といって差し支えないほどの衝撃でもあった。

 だって、ずっと、ずっと一緒だったんだ。大げさと言われるかもしれないけど、死ぬまで一緒だと思ってたくらいなのに。

 枕の具合を確かめるように顔をうずめた。この部屋とは違う、家と、そして何よりも葉子と同じ匂い。大きく息を吸うと、葉子を感じて、落ち着くよりもなぜか、顔がにやけた。



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