夢 | ナノ

エレジー

痛々しい18禁要素のお話です。18歳未満の方はご遠慮ください。






久しぶりに帰ってきた純は、自分の家にもよらずに、中学の時の友達と遊びに行った。そしてその後はシニアの友達の家でその頃のチームメイトたちと騒いで、日付が変わるころ、私の待つ純の部屋に帰ってきた。

「おかえり」
「…何してんだよ」

純は私を見て眉をひそませて、ちっと舌打ちをする。

「おばさんもお姉たちも待ってていいよって言ってくれたから」

家の中はもう静まり返っている。おばさんもおじさんももう寝ちゃったし、同じ二階に部屋があるお姉たちは夕方に彼氏と出て行ったきりだ。私のママも純くんが久しぶりに帰ってくるならと簡単に外泊を認めてくれた。それも、これも、私たちの家は隣同士で、子供のころからの付き合いだからだ。私たちの付き合いには男女の意味はないとおばさんもママも思っているから。こうして私は勝手知ったる純の部屋にいれる。

「…風呂入ってくっから」

荷物をボンと私に当てるように投げつけると、振り向きもせずに携帯と財布をジーンズのポケットから出してベッドに放り投げる。そして寝ているおばさんたちに気を使ってか、そっと部屋から出て行く。投げつけられた帰省用の荷物は軽い。手持ち無沙汰なのも手伝って、無意識に開けてみる。中には電車の中で読んできたらしい漫画が一冊とTシャツだけだ。

趣味かわったな…

ぺらっと漫画を開いて、今まで純が好きだった系統の少女漫画ではないことに気づく。誰かの影響か、それとも純自身の変化か。どちらにしても疎ましいことにかわりはない。

私はまだ中学までの純から抜け出せないでいる。この部屋から出て行った純は私の知る純ではなくなってしまっているのに…。

チャっと小さい音がして、部屋に純が戻ってきた。ハーフパンツに上半身は裸のまま、髪も乾かしきらずにタオルをかぶっている。純は私を無視するように何も言わないまま、ベッドに放り出していた携帯を手にする。タオルでごしごしと髪を拭きながら、片手で携帯をいじって、時折ふっと笑みをもらす。

そのメールの相手は誰なの? 私の知らない、チームメイト? それとも…?

寮に入ってから、私にメールなんてしてくれなかったくせに。私のメールに返事くれないくせに。私の知らない誰かには、そんな顔してメールするんだ。

じっと見る私の視線に気づいたのか、ふと純は私の方に顔を向けた。向けられた険しい顔がすっと困惑した表情にかわる。

「…なんつー顔してんだよ」
「え…」

どんな顔しているかなんて私にはわからない。言えるとすれば、うれしいとかたのしいとかそんな顔ではないだろうということくらいだ。

純はため息をつくと携帯をたたんだ。

「もう帰れよ。オレも、もー寝んだからよ」
「やだ」

即答すると純はクソっと小さく吐き捨てた。と、携帯を叩きつけるようにベッドに投げるとほぼ同時に私に覆いかぶさってきた。ベッドの脇で押し倒された私は視線をベッドの下の隙間を泳がせる。

私は純の顔は見ない。純は私の顔を見ることができない。

青道の寮に入ると決まったあの日に、衝動と感傷で嫌がる私を初めて抱いたときからずっと、私たちは顔を見ないまま体を重ねる。

キスもしない。シャツの上から私の胸をまさぐっていた純の手が苛立つようにシャツをめくりあげた。ひやりとする空気に体がさらされて、純の熱い指が直に私の上を這う。純の指に感じてかたくなった先端を純は口に含んで舌で転がす。声が出そうになるのを体中に力をいれてこらえる。スカートをたくしあげて下着に手をかけていた純は乳首から口をはなして苛立つようにつぶやく。

「力抜けよ」

言われるがままに体の力を抜くと、するっと下着を取り去った。純は私の体の間に入ろうとして舌打をする。手を伸ばしてベッドに放り出していた財布をとると、中からゴムを取り出した。それを口にくわえると、私の腰を自分の方に引き寄せて、私の片足を自分の肩に乗せる。露になったそこだけを見て、純はゴムの袋を歯で噛み千切って開ける。慣れた手で自分でつけると、容赦なく私の中に進む。慣らされないままに純を受け入れて、痛みで顔をしかめる。それが純の目に入ったらしい。

「萎えるから、ンな顔してんじゃねぇよ」

顔の上で腕を組むようにして、純から顔が見えないようにする。どうせすぐよくなるくせに、と純の声を痛みと快感で交差するところで聞いた。純の言う通り、だんだんと快感だけに支配されていく。純は自分だけのために動いて、それでも私は相手が純だというだけで感じていける。声を出すわけにはいかないから、心の中で何度も名前を叫ぶ。

純は動くのをやめて、小さく息をはいた。余韻もなく私の中から出て行くと、手早く自分の始末をつける。純の険しい顔は自己嫌悪の証だ。

純にその顔をさせることができるのは私だけ。それだけに満足するために私は泣きたくなるようなおざなりな純の抱き方をも我慢する。今、純の心の中に誰がいたって、かまわない。きっと、また、純は私を抱く。無理やり私を抱いてしまった過去に囚われて、後悔と自己嫌悪で私から逃れられない。それはやさしさなんかじゃなくて、ただの弱さだと自分でもわかっているだろうに。

私はゆるむ口元を隠すことなく純を見た。

「純、私のこと、好き?」
「さぁな」

純は首をふる。感情のない声で、それでも私をまっすぐに見た。
いつまでも昔のままの匂いの残る純の部屋から、幼馴染から感情を伴わずに男と女になってしまった私たちは、抜け出せないでいる。

「おまえは、オレのこと好きなのかよ」
「まさか」

私は微笑んだ。きっと、純の知らない顔で。

20070925


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