夢 | ナノ

お手伝いはグーで

「こっち、野球部!」
文化祭の当日、ふらふらしながら、そういやうちのクラスの出し物なんだっけと亮介と首をかしげていたら、文化祭委員に呼び止められた。
「おー、何だよ」
「準備は何もしなかったんだから、当日くらい役に立ってちょうだい」
腰に手を当てて、仁王立ちする委員に首をすくめる。
「うちのクラスって何するんだっけ」
亮介がにこやかな顔で問いかけると、委員は愕然とする。そりゃあ、まぁ、自分のクラスで何するかも知らないなんて、どうよ、とは思う。思うけど、しょうがない。秋季大会真っ最中なのだ。
「スムージーよ」
「…スムージー」
って何だ?
目で亮介に問いかける。しかし亮介も知らないのか、にこやかなはずの笑顔にストレスが浮かんできている。あぁ、やべぇ、亮介がこの顔したら110番。謂れのない被害を被るのはいつもオレだ。
「氷と果物と牛乳とかヨーグルトで作った飲み物よ」
「あぁ、どろっとした流動食みたいなやつね」
あ、亮介のやつ。大人げねぇ。ほらみろ、委員のヤツ、ヤな顔しやがったじゃねぇか。まぁ、でもオレにあたられるよりはマシか。
「で、何手伝えっつんだよ」
めんどくせーと思いながらも、まぁ、委員が泣き出す前にこの空気を一掃したい。
「果物むいてくれる?」
委員はちょっとほっとしたようだった。
そう言って、調理室に連れてくると、オレと亮介に包丁を手渡した。
目の前にはイチゴとオレンジ、りんごにキウイ、パイナップルだ。
ん?パイナップル?
「じゃあ、オレ、イチゴとオレンジ担当するね」
さっさと亮介は分担を決めてしまう。
「ちょ、ちょっと待てよ、イチゴなんてヘタとるだけじゃねぇか。パイナップルとりんごなんか…なんか…」
亮介の笑顔に言葉がつまった。包丁を持ってにこやかな顔をしている亮介はとてつもなく怖い。
つーか、パイナップルってどうやってむくんだよ。なんで缶詰じゃねーんだよ。
「パイナップルは簡単だから大丈夫」
委員はそう言うと、サクッとヘタを切り落とすと、スパッスパッと縦に皮を切り落としていった。
あぁ、なるほどね。
りんごみたいにクルクルむくと思ったのが間違いだったらしい。
「おー、けっこう簡単じゃん」
「あ、指、気をつけてね。ちゃんと、にゃんこにしないとダメよ」
「…にゃ、んこ?」
今、あまり聞かない言葉を聞いた気がする。しかし委員は気付かないのかにっこりと笑って手をグーにしてまるで招き猫のようなポーズをオレに向けた。
かわいー、じゃなくて。
何考えてんだオレ。
「こうしないと指切っちゃうからね」
口調は偉そうだが、そのポーズが全てを帳消しにする。
あー、やべえ、けっこうツボだ。
オレは手をにゃんこにしてスパッとパイナップルのヘタを切り落とした。

20130827(初出し2010)


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