召し上がれ
「さち、トッポあったけど食う?」
「食べる!ちょうだい!」
暑い暑い夏の日。
せっかくの部活のオフだけど、暑さで外に行く気になんてなれないわたしたちは、ブン太の家で過ごすことにした。
飲み物を取りにいった際に発見したらしいトッポをわたしに渡すと、ブン太は隣に腰をおろす。
袋を開けると、ほのかに甘いチョコの香りがした。
うん、おいしそう。
「あ、ねえねえブン太」
「ん?」
「知ってる?トッポって、冷凍庫で凍らすとおいしいんだよ」
「え、まじで?」
「まじまじ」
トッポを1本くわえながら袋を差し出すと、幸村に1週間お菓子禁止令出された、と彼は少し悲しげに呟いた。
ああ、昨日赤也にやったいたずらか。とばっちりを食らった幸村に怒られたのは知ってたけど、禁止令まで出されてたとは。
すこしだけかわいそうだけど、これもブン太のため。
すべてわたしがもらうとしよう。
「そうだ。ちなみにね、カントリーマームはあっためた方がおいしいんだよ」
「へー…」
「まさにできたてって感じ。できたてのカントリーマーム食べたことないけど、そんな感じ」
「ふーん」
わたしがトッポとカントリーマームについて語ってるというのに、ブン太はなにかを考えているようだ。
かと思うと、いたずらを思いついた子供のような顔になる。
ああ、嫌な予感しかしない。
「なあ」
「な、なに?」
嫌な予感は的中するもので、怪しげな瞳をしたブン太はじりじりと近づき、わたしの首元に手を這わす。
「お前は?」
「ちょっ、今汗くさいから!」
「そんなのかんけーないし」
「いやいやあるから!」
いたずらっ子の顔をしたブン太はわたしの言葉なんて聞こえてないみたいに、首筋をぺろりと舐めてにやっと笑う。
「で、さちはどっちなわけ?」
「な、なにが」
「冷やして食うのと、あっためて食うの。お前はどっちがうまい?」
いや、常温だと思う。
召し上がれ
(幸村のせいだ…)
(幸村に感謝だな)
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