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「なまえーなまえー」

「んー?」

「いつまで雑誌読んでんだよ、つまんねーよ」

「はいはい」


もう読み終わるからちょっと待ってて。
何度目かわかんねーそんな言葉を聞きながら、なまえの腹に腕をまわし、肩には顎を乗せる。あーつまんねー。


「つかお前さ」

「何?」

「少し太った?」

「はあ!?」


あ、こっち向いた。
俺のそんな思いとは裏腹に不満そうな顔をしたなまえは、鋭い目つきで俺を睨む。


「彼氏にする目じゃねーだろ」

「彼女に言っていいことじゃないでしょッ」

「彼女以外だったら誰に言うんだよ」

「…まあ、そうだけど」


納得はしたっぽいけど、まだ不満そうな表情のままのなまえが目を伏せる。
やっぱ女って気にすんだなそういうの、まあ俺も気にしないっつったら嘘になるけど。


「…ふっ、冬だからっ」

「は?」

「冬はね、冬眠に備えて脂肪を蓄えるの!」

「お前くまか何かだったの?」

「ちがう、けどっ!」


口を一文字にして眉間に皺を寄せる姿は、何だか子供みたいで笑っちまう。
…あー、案の定不機嫌そうな顔になった。


「…でも、脂肪を蓄えるのは本当だもん。柳くんが言ってたもん」

「これから正月なのにどうすんだよ、正月太りするぞー」

「うーるーさーいー!」


むに、と腹の肉を触りながら言えば、とうとう我慢の限界がきたらしいなまえが暴れる。


「あーもうじたばたすんなって、嘘だから」

「はあ?」

「太ったって嘘、別に前と変わってねーよ」

「何それ」


暴れるのをやめて大人しくなったなまえをもう一度抱きかかえ、頬に軽くキスをしながら笑う。
よしよし。まあ経過はどうあれ、って感じだな。


「太ったとか言えば絶対こっち向くと思って」

「それで嘘ついたのか」

「んー」

「最低!」


満足気にキスする俺と、不満げでありながらも安心した様子のなまえ。
さっきまでこいつが集中してた雑誌なんて、もう遠くに投げちまおう。


「そんなに構って欲しかったの?」

「何回構えっつってもお前雑誌読んでたじゃん」

「そうだけどさあ。でも太ったとかそういうのはずるいっ」

「わーるかったって」


徐々に機嫌を取り戻したなまえの頭を撫でながら言えば、「仕方ないな」となまえも笑った。
それに、まあ。


「別に気にしねーから正月もがんがん食えよ。俺飯うまそうに食う奴好きだし」

「でも本当に太ったらどうすんの?」

「そしたら――…寒い冬だし、」


2人で暖めあいながら、運動すればいいんじゃね?
腰に手を回して笑えば、顔を赤くしたなまえが「ばか」と言ってうつむいた。
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テーマ「人外ファンタジー」
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